「このままでいいのか」と悩むミドル層へのヒント キャリアの専門家が解説

このままでいいのか

皆さんは、キャリアにおいて「自分はこのままでいいのか」という漠然とした不安を感じたことはないでしょうか? 特に、社会人として一通り経験を積んだ後の30〜40代のミドル世代が、中堅社員や管理職になる頃に感じることが多いようです。

では、なぜミドル世代の時期に漠然とした不安を覚えるのでしょうか。その理由と不安から抜け出すためのヒントを、株式会社パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員に解説いただきました。

ミドル世代が「このままでいいのか」と感じる要因は?

成長実感の喪失から来る「第1次モヤモヤ期」

キャリアにおいて、モヤモヤを感じる時期は大きく2回あると分かっています。まず、「第1次モヤモヤ期」は30歳前後で到来します。このときのモヤモヤの原因は「成長実感の喪失」です。この年代になると良くも悪くも業務に慣れてしまうので、ただひたすらPDCAをぐるぐる回す状態になりがちです。すると、仕事を通して自身の成長実感を感じにくくなり、会社への不満が上昇すると同時に現在の会社で働き続けたい気持ちが低下します。

この時期に「自分は本当にこの仕事をやりたかったのだろうか?」「このままここにい続けていいのだろうか?」と思い始めます。実際に、このタイミングで転職する人も少なくありません。

■会社への不満と継続就業意向

「会社への不満と就業意向」のグラフ

出典: 中原淳・小林祐児・パーソル総合研究所『働くみんなの必修講義 転職学 人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは』KADOKAWA

企業の昇進構造から来る「第2次モヤモヤ期」

それを乗り越えて次にやってくるのが、40歳前後に訪れる「第2次モヤモヤ期」です。この第2次が到来する理由は、日本企業の「平等主義的競争主義」と呼ばれる昇進構造にあります。「平等」とは、新卒で入社した社員が最初は全員、幹部層や管理職候補として扱われるという意味です。

平等主義的に社員を扱うと何が起きるかというと、幹部・管理職候補の選抜が遅れるのです。誰にでも出世のチャンスがあるような状態が続き、その中で少しずつ選抜が行われていきます。そうするうちに「この会社では、自分はもうこれ以上昇進できない」とキャリアの天井が見えてくるのが、だいたい40歳前後なのです。

ここで問題となるのが、「これ以上の出世の見込みがなくなる時期」と「転職の難易度が高くなる時期」が重なることです。40歳前後でキャリアの天井が見えてきてから転職を考えても、一定のキャリアを積んでいるこの年代では、今と同様の待遇やそれ以上を求める場合、転職の難易度は当然高くなってしまいます。

すると、「これ以上の出世は望めない。かといって転職も難しいんじゃないか」というジレンマを抱えて悩むことになるのです。

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「このままでいいのか」という不安から抜け出すためのヒント

では、こうしたモヤモヤとした不安から抜け出すためには、どうすればいいのでしょうか。それには、「余白」「出会い」「問い」の3つがカギとなります。

じっくり考えるための余白をつくる

自分のキャリアについて「このままでいいのか」とモヤモヤした不安を抱えたときは、まず「余白」をつくることが大切です。業務に追われ、忙殺されて考える暇もないと、変わらぬルーティンの毎日から抜け出すことはできません。まずは、手を止めて時間や心の余裕をつくり、じっくりとキャリアについて考えたり新たな行動をしたりする機会を得ましょう。

新たな出会い・つながりをつくる

次に大切なのは、新たな出会いやつながりをつくることです。自分一人だけで考えを巡らせても、モヤモヤは解消されません。30〜40代にもなると、働き始めて長い年月が経っていることから、考えが凝り固まってしまいがちです。自分だけでキャリアの棚卸しや内省をしようとしても多様な視点を持てず、大事なことを見過ごしてしまいます。そこで、新たな出会いが必要なのです。

ただし、相手は誰でもいいわけではありません。ポイントは「自分の話に共感し過ぎない、キャリアについて話せる相手」を選ぶこと。なぜなら、距離が近い相手との会話は息抜きにしかならないからです。例えば、同じ会社の同じ部署で働いている同僚と話しても、互いに愚痴や悩みを言い合って、それに満足するだけになってしまいがちです。

社内の「斜めの関係」の人や社外の人を探す

具体的にどういう相手が良いかは、第1次モヤモヤ期と第2次モヤモヤ期で異なります。30歳前後で迎える第1次の場合は、社外よりも先に社内での出会いを探してみると良いでしょう。例えば、新卒のときにお世話になった人事担当者や、最初に配属になった今とは違う部署の上司など、いわゆる「斜めの関係」の人です。中規模以上の会社であれば、まだ会ったことのない社員もいるはずなので、その中から相談相手を探してもいいでしょう。

在籍年数や会社の規模にもよりますが、30歳前後だと、まだ社内のことをすべて理解できているわけではないでしょうから、別の社員と話すことで、もしかすると社内での成長機会が見つかるかもしれません。「キャリアについて相談させてください」と言われて嫌がる人はあまりいないはずなので、行動してみましょう。

一方で、40歳前後で迎える第2次モヤモヤ期の場合は、社外で越境的な出会いやつながりを求めることをおすすめします。というのも在籍年数が長くなると、会社のことはおおよそ把握しているはずで、そうなれば同じ会社の人と新鮮な会話をすることは難しくなってしまいます。

キャリアについて話しても差し支えがなさそうな他社の人や、キャリアアドバイザーなどの相手を探してみてください。

他者から問いを受ける

出会いやつながりをつくったら、次のポイントは相手から問いを受けることです。これは簡単なようでいて難しく、人は誰かに相談をするとき「答えが欲しい」と思ってしまいます。モヤモヤや悩みを抱えていると、そこから早く抜け出したくてそれらしい「正解」にしがみつきたくなってしまうものです。

しかし、自分の頭で考えることをやめて他人に回答を委ねてしまうと、結局モヤモヤからは抜け出せません。必要なのは、与えられた答えではなく、自分自身の思考の種となるような「問い」なのです。人は他者から「問い」を与えられて、初めて真剣に答えを考え始めるものだからです。

そこで、相談をする際は最初に「答えや共感を求めているというよりも、壁打ち相手になってほしい」と目的を伝えておけると良いでしょう。

モヤモヤを解消するための「プロとの対話」という選択肢

これらを踏まえたうえで、キャリアのモヤモヤを解消するための選択肢として、「転職活動に取り組んでみる」ことも効果的な手段として挙げられます。

モヤモヤを解消するためのヒントとして、「考えるための余白をつくる」「出会いやつながりをつくる」「他者から問いを受ける」ことを挙げましたが、転職活動にはこれらの要素が内包されており、実際に転職をする・しないに関わらず、取り組んでみることが気づきやキャリアへの納得感につながるでしょう。

また、転職には企業と自分自身のニーズをすり合わせる上で、「言語化力」と「自己認識力」の大きく分けて2つの力が求められます。前述したモヤモヤを解消するためのヒントはこの2つの要素につながるものでもあり、キャリアのプロであるキャリアアドバイザーなどに相談することで、また別の視点でのコメントやアドバイスをもらうことができます。

相談してみたうえで、「モヤモヤを解消するためには実際に転職をしてみるのが良さそうだ」と感じた場合には、企業の面接といった実践的な行動へ移ってみるのが良いでしょう。

ただし、転職で必ずしも「自分に100%ピッタリの会社」が見つかるわけではないことも理解しておきましょう。仮にその時点で会社のニーズと求職者のニーズがピッタリ合ったとしても、入社した後に会社の環境や状況はもちろん、求職者自身も変化していくからです。

たとえ転職したとしても、「会社も自身も変化し得る」ことを理解したうえで、情報収集をしたり、人と会って話したり、自己理解を深めたりといったことを継続していくことが重要でしょう。

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まとめ

30〜40代のミドル世代の多くが経験する、「このままでいいのか」という漠然とした不安。その不安は、「成長実感の喪失」を感じたり、「今の会社でのキャリアの天井」を感じたりすることで生まれます。

モヤモヤ期を抜けるには、1人で考え込まずに生活に余白をつくり、新たな人と出会い、他者から問いを受けることで自身と向き合うことが重要です。

新たな出会いとして、キャリアのプロと対話することもひとつの方法です。doda X」では、転職をするという結論が出ていなくても、ヘッドハンターやキャリアアドバイザーに相談することが可能です。

「このままでいいのか」とモヤモヤを抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

小林 祐児(こばやし・ゆうじ)

株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員

NHK放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。著書に『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)、『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』(光文社)、『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)など多数。

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