ストックオプション制度とは?仕組みや種類、メリットなどを解説

ストックオプション制度とは、従業員や役員が事前に決められた価格で自社の株を取得できる権利のことを指します。ここでは、ストックオプション制度の仕組みや種類、メリット・デメリットなどについて分かりやすく解説します。

ストックオプション制度とは?

ストックオプション制度は、会社が従業員や役員に対して、あらかじめ決められた価格で会社の株式を取得できる権利(新株予約権)を付与する制度です。この制度はアメリカで始まり、日本でも1997年に認定され、運用が開始されました。

現在では、従業員のモチベーションアップにつながることから、東京証券取引所に上場している企業の29.3%、グロース市場では79.7%の企業が導入しています。

参照:東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書(2023年)|東京証券取引所

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ストックオプション制度の仕組み

ストックオプション(新株予約権)を付与された従業員や役員は、自社の株価が取得時よりも上昇したタイミングで権利を行使(購入)し、その時点での株価で売却することによって、権利行使価格との差額を利益として得ることができます。

株式を取得するには、期限や上限額など一定の規定がありますが、その範囲内であれば好きなときに自社株の取得が可能です。特にまだ従業員数の少ないベンチャー企業などであれば、取得可能な株数も多い傾向にあるため、従業員が大きな利益を得られる可能性があります。

とはいえ、ストックオプション制度は株式の取得を強制するものではありません。加えて、取得した後は必ずしも売却しなければならないわけではなく、保有し続けることも可能なため、従業員や役員にとっては、基本的に損をすることのない仕組みになっています。

■ストックオプション制度で利益が得られる仕組み

ストックオプション制度の種類

ストックオプションには、従業員に金銭的な負担が発生する「有償ストックオプション」と、金銭的な負担が発生しない「無償ストックオプション」があります。それぞれどのようなものか、詳しく解説します。

有償ストックオプション

有償ストックオプションとは、購入希望者が発行価額を支払って入手するストックオプションのことです。購入時にまとまった金額を支払う必要がありますが、権利行使(購入)時は課税対象となりません。

無償ストックオプション

無償ストックオプションとは、費用の発生なしで購入権利を得られるストックオプションです。

有償ストックオプションが「投資」の意味合いが強いのに対して、無償ストックオプションは従業員や役員に対する「報酬」としての意味合いが強いのが特徴です。

また、無償ストックオプションは購入費用が発生しないため税制上は給与と同等の扱いとなり、権利行使時に給与課税が適応されます。ただし、適格要件を満たすことで、給与課税が免除されます。これを税制適格ストックオプションと呼びます。以降で詳しく解説します。

<無償ストックオプションの種類>

無償ストックオプションの中にもいくつか種類があり、主なものに「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」の2つがあります。それぞれの詳細は下記のとおりです。

・税制適格ストックオプション

権利取得のための費用が必要なく、一定の要件を満たすことで税制優遇を受けることができるため、権利行使(購入)時にかかる給与課税が免除されます。ただし、売却時には譲渡所得として20%の課税が発生します。

・税制非適格ストックオプション

厳しい要件を満たす必要はありませんが、権利行使(購入)時に最大で約55%の給与課税が、売却時には20%の譲渡課税が適応されます。

前述したとおり、税制適格ストックオプションの場合には、定められた要件を満たすことで給与課税等が免除されるなど、税制面での優遇を受けることが可能です。

税制面での優遇を受けるには、主に下記のような租税特別措置法に定められた要件を満たす必要があります。

<税制面で優遇を受けるための要件>

・対象者の範囲:付与対象者が発行会社および100%子会社の従業員・役員であること。

・年間権利行使限度額:権利行使限度額の年間合計額が1,200万円を超えないこと。

※令和6年度改正事項あり

・権利行使価額:新株予約権の1株あたりの権利行使価額は、付与契約締結時の1株あたりの価額以上であること。

・権利行使期間:新株予約権の権利行使は、付与決議後2年を経過した日から、付与決議の日後10年を経過するまでのあいだであること。※令和5年度改正事項あり

参照:ストックオプション税制|経済産業省

日本におけるストックオプション発行件数で最も多いのは、前者の税制適格ストックオプションです。以降で紹介するストックオプション制度については、税負担が最も軽い税制適格ストックオプションを基準としています。

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ストックオプション制度の従業員・役員側のメリット

ストックオプション制度を導入すると、従業員・役員にとってさまざまなメリットがあります。主なものは下記の3つです。

大きな利益を得られる可能性がありモチベーションが上がる

ストックオプションを付与された従業員は、会社の業績が上がり、株価が上昇することで大きな利益が得られる可能性があります。さらに、事業への貢献や努力が報酬という形で現れるため、モチベーションや貢献度アップにもつながります。

金銭的な負担や損失のリスクが少ない

無償ストックオプションの場合、新株予約権を取得する際の金銭的な負担はありません。株価が上がるタイミングを見計らって権利行使および売却すれば、損失のリスクを避けられます。

万が一、株価が下落したとしても、権利を行使しなければ実質的な損失はありません。金銭的な負担や損失のリスクが少ないことは、メリットといえるでしょう。

ただし、ストックオプションを付与時の条件に、在職中のみ行使可能とする条件が記載されている場合は、退職時に権利が自動的に失効します。この条件は多くの企業で取り入れられています。

税制適格ストックオプションは給与にかかる税金より安い

日本では給与として報酬を受け取る場合、課税所得が4,000万を超えると所得税と住民税を合わせて最大55%の税金が課されます。課税所得が900~1,800万円未満の場合でも43%と、高額所得者ほど多額の税金を納めることになるのです。

参照:国税庁「No.2260 所得税の税率

しかし、ストックオプションの場合、権利行使後の売却によって大きな利益が出ても20.315%の課税で済むので、税金は圧倒的に安いといえます。

この20.315%の課税が適用されるには、前述した税制適格ストックオプションの要件を満たしている必要があります。

ベンチャー企業の場合は取得可能株数が多いことも

ストックオプションは、発行済み株式総数の10〜15%を目安に発行するケースが一般的です。過度にストックオプションを発行すると既存株主の保有株式の価値が落ちてしまうため、企業は従業員が増加するにつれてストックオプションの付与率を下げる必要があります。

ストックオプションの権利を行使して大きな利益を得たい場合は、従業員数が少ない創業期のベンチャー企業に入社すると、1人当たりの取得可能な株数が多くなるケースがあります。

ストックオプション制度の従業員・役員側のデメリット

ストックオプション制度には、メリットが多い反面、デメリットもあります。主なものは下記のとおりです。

株価が上がらなければ利益が得られない

無償ストックオプションの場合、権利を行使しなければ損失が出ることはありませんが、株価が上がらなければ利益は得られません。必ず株価が上がるとは限らないため、注意が必要です。

社内で不公平感が発生する可能性がある

ストックオプションの付与基準が不明瞭であれば、例えば役職が同じであっても付与数や付与比率に差が生じることがあり、これが原因で社内に不和が生じるケースがあります。付与する会社側は、社員のあいだで不公平感が生まれないよう、明確な付与基準を設定することが求められるのです。

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ストックオプション制度のある転職先を探す際の注意点

ストックオプション制度は、税制適格ストックオプションであれば、給与として受け取る報酬と比べて税負担が少なく、将来的には大きな利益が得られる可能性があります。そのため、付与される側にとっては非常に魅力的な制度といえ、特にベンチャーやスタートアップ企業で導入されていることが多い制度です。

加えて、この制度を導入することは、会社の魅力向上をはじめ、優秀な人材の獲得や流出防止に寄与するため、導入する企業も増えています。特に上場を控えた将来性のある企業では、インセンティブプランとして準備しているケースも多くあります。

しかし、ストックオプション制度のみに焦点を当てて転職をすると、自分が描いていたキャリアとは異なったり、仕事内容のミスマッチが生じたりなど、結果的に早期離職につながるリスクもあります。転職先を選ぶ際には、自分が「何のために転職するのか」という明確な転職軸を持つことが重要です。この転職軸に基づいた上で、ストックオプション制度のような待遇や制度を参考にすることが望ましいといえます。

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藤沼 寛夫(ふじぬま・ひろお)

アカウントエージェント株式会社 代表

2014年にEY新日本有限責任監査法人へ入社し、主に上場不動産業やアパレル業などの会計監査および内部統制監査を担当。また、IPOベンチャーでの主査業務や不正リスク対応基準に基づく不正調査業務にも従事。2017年に公認会計士として登録後、中堅会計事務所を経て、2019年に藤沼会計事務所を開業し、2020年にアカウントエージェント株式会社を設立。現在は、税務顧問やM&Aアドバイザリー業務、資金調達・ファクタリング支援に加え、多くの会計・税務・金融メディアで記事の監修に携わっている。