転職希望者と起業家との「未知の出会い」をつくる

フォースタートアップス株式会社・
川村 純也 さん

HeadHunter of the Year 2025

IT・インターネット(広告・メディア)部門 VP
エグゼクティブ支援人数部門 3位

川村 純也

フォースタートアップス株式会社
ヒューマンキャピタル本部
ヒューマンキャピタルディビジョン
シニアヒューマンキャピタリスト

「for Startups(すべては、スタートアップスのために。)」というビジョンを掲げ、スタートアップ企業を中心に、成長産業支援を手がけるフォースタートアップス株式会社。「スタートアップ企業の経営を、前に進める」サポートの一環として、人材紹介事業を手がけています。

フォースタートアップスで転職希望者と企業、双方に対する人材支援を行うのが、同社の「ヒューマンキャピタリスト」。たくさんの転職希望者を支援している川村純也さんもその1人(※)で、doda XによるHeadHunter of the Year 2025では「IT・インターネット(広告・メディア)部門」でVP、「エグゼクティブ支援人数部門」で3位を受賞しました。

ミドル・シニア人材でも希望者が増えているというスタートアップ企業への転職や、川村さんが人材支援で大切にしていることについて伺いました。

(※)2025年10月現在、フォースタートアップス株式会社のグループ会社「アリカタ株式会社」に所属

年間200回の社内勉強会で、
起業家の生の声に触れる

—— 川村さんのこれまでのキャリアと、人材支援のお仕事に就いた理由を教えてください。

かつて兄がスタートアップ企業で働いていたので、学生時代からスタートアップ業界と働き方に関心がありました。大学時代にはインターンを複数のスタートアップ企業で経験し、その後はマーケティング支援の会社に就職。しばらくは広告運用の仕事をしていました。

その後、幼少期から一緒に住んでいた祖母が亡くなったことをきっかけに、わが身を振り返り、「やりたいことを突き詰めよう」と勤めていた会社を退職。フリーランスでマーケティングの仕事をしながら、お笑い芸人になるため養成所に通うことにしたんです。

しかし、2年頑張っても芸人として芽が出ず…。その道にいったん区切りをつけ、転職活動を行うなかで出会ったのが、フォースタートアップス株式会社(以降、フォースタートアップス)でした。兄からスタートアップ企業の魅力を聞いていたことを思い出し、自分も起業家の夢を支援するため、現在の仕事に就きました。

—— スタートアップ企業で働かれていたお兄さまは、どのような方だったのでしょうか?

世間的にそういった企業が認知される前から、スタートアップでインターンしていました。

私が就職活動で東京に来ていたときに、仕事の話をよく聞かせてくれました。兄の話を聞いているうちに、自分にとってスタートアップが身近な存在になったのだと思います。

鮮明に覚えているのは、当時、上場を果たした若手スタートアップ経営者の話を兄としたことです。「自分と年齢がほとんど変わらないのに、すごい人がいるんだ」と、ワクワクしたことを覚えています。

—— 転職支援を行うヒューマンキャピタリストとして、川村さんご自身にどのような強みがあるとお考えですか?

マーケティングの実務経験があることでしょうか。マーケティング出身のヒューマンキャピタリストは稀で、転職希望者や求人企業へ提供できる実体験に基づいた情報提供できることが強みです。

転職希望者の方とお話しするときは、企業に興味を持ってもらえるような「伝え方」を特に意識しています。スタートアップへの転職は、企業を知った瞬間の第一印象が非常に大事だと考えています。そこで起業家や事業について、どのように話せば、その魅力が最大限伝わるのか。相手の感情の動きを意識した伝え方、話し方がとても大事だと思っています。

とにかく、楽しみながら企業のことを知っていただきたいんですよ。「関わった相手にハッピーになってほしい」という気持ちで、話し方や伝え方を工夫する意識は、芸人を目指していたころに身についたものなのかもしれません。

—— フォースタートアップスの強みは、どのような点にありますか?

フォースタートアップスのヒューマンキャピタリストの役割は、人材支援を通してスタートアップの経営を前に進めることに寄与することです。

強みは、スタートアップ企業の高品質な情報を収集する体制があること。当社では、起業家やスタートアップ企業の経営者を迎えた「勉強会」を、年におよそ200回、ほぼすべての営業日に開催しています。

この勉強会の目的は、登壇者の方から事業を通して目指している世界や現在の事業課題を、本人の熱量をもってお話しいただき、企業について深く理解することです。私たちにとっては、スタートアップにまつわる最前線の情報を得るだけでなく、起業家の生の声を聞くための重要な場になっています。

また、法人向けに成長産業領域に特化した国内最大級の情報プラットフォーム『STARTUP DB』を運営しているのも当社の特徴です。わたしたちも、26,000社を超える日本のベンチャー・スタートアップ企業の情報をいつでも参照できる体制を整えています。

勉強会で情報の「質」、『STARTUP DB』で情報の「量」を担保するのが当社の情報収集体制であり、強みの源泉です。

スタートアップ転職は
「ミッションへの共感度」重視

—— スタートアップ企業への転職にはどのような特徴があると思いますか?

最も特徴的なのは、スタートアップへの転職は「ミッション・ビジョンへの共感度が求められる」点だと思います。

スタートアップ企業の社員は、自社のミッション・ビジョンを「そらで言える」ような人が多いと感じます。皆さん、企業のミッション・ビジョンに共感した上で、入社を決断しているんです。企業のミッションを十分に理解し、共感した上で意思決定をしないと、ほかの社員と熱量の違いで入社後なかなか活躍できない、というケースは少なくないかもしれません。

—— スタートアップ企業の求人状況には、どのような傾向があると感じていますか?

スタートアップ全体で慢性的な人材不足が続いており、今後も加速していくと予想されます。

この理由は「人が辞めている」のではなく、それぞれの企業が急成長した結果「人が足りない」状況になっているから。ベンチャーキャピタルや銀行からの資金調達が盛んになり、スタートアップへの資金流入が10年前と比べて7倍以上(※)になっていることも、その要因の1つです。

一方で、人材不足であるにもかかわらず、企業側は採用活動にとても慎重な印象です。カルチャーフィットしていない人の採用が経営に影響を及ぼす場合もあるため、どの企業も「誰を採用するか」の見極めに注力しています。

※『STARTUP DB』保有データより

—— スタートアップ企業に興味を持つ方がいる一方で、転職に不安を感じる方も多いのではないでしょうか?

不安定だと思い込んでいる方もいらっしゃいますが、かつての「スタートアップへのマイナスイメージ」はかなり解消されてきたと思います。

マイナスイメージの1つに「スタートアップ企業の年収の低さ」がありますが、資金調達が盛んになり、結果としてスタートアップのほうが好条件になることも。近年だと、「大企業の採用競合がスタートアップ企業」というケースも増えており、両方から内定が出て、どちらに入社するか迷う転職希望者も少なくありません。

また、若手だけでなくミドルからシニア層、エグゼクティブ層のスタートアップへの転職も増えています。事業が成長した後を見据え、「成熟した組織の在り方を知っている」人が企業から求められているのです。

40代から50代の転職希望者からは「自分の年齢でスタートアップへ行っても大丈夫だろうか」とご相談を受けることもありますが…。むしろ、マチュアな方がスタートアップに挑戦していただきスタートアップの経営を前に進めてほしいと思っています。

—— どのような人が、スタートアップへの転職を成功させていますか?

テキスト情報のみだとわかりにくい会社もあるので、「まずは話を聞いてみよう」というフットワークの軽い方だと思います。

スタートアップ企業は新しいビジネスやニッチビジネスを手がけているので、事業内容を見てもわかりにくい企業もあると思います。だからといって敬遠せず、人に会って話を聞き、行動しながら考えることが、ご自身が求める働き方に出会うためには大切です。

もう1つは、納得感を持った上でスタートアップ企業に勤める意思決定ができる人です。

繰り返しますが、スタートアップは、スキルだけでなくカルチャーマッチが重要です。その企業のビジョンやカルチャーを理解した上で、「本当に挑戦するか」を考えることが必要。転職にあたり、自分自身の意思をしっかり言語化できている人は、納得してスタートアップ企業へ入社できますし、その後も活躍できていると思います。

ただ、誰もが初めから自分の意思を明確にできるわけではありません。そのようなときは、われわれヒューマンキャピタリストに頼っていただきたいです。対話を通して、転職希望者の方々が自己認識を深められるようご支援できればと思っています。

転職希望者と起業家の
「波長が合うか」を見極める

—— 過去のお仕事の中で、印象に残っているご支援についてお聞かせください。

セキュリティに関する高いスキルをお持ちの、マチュアなITエンジニアの方をご支援したことがありました。

最終的には教育支援を行うスタートアップ企業に転職されたのですが、その方は当初、後の転職先となる会社に良い印象を抱いていなかったんです 。「別のエージェントから話を聞いたが、あまり興味を持てなかった」とお話しされていたのですが…。私は「ちゃんと理解してもらえれば、この企業とこの方は、必ずカルチャーマッチする」と思いました

企業の特徴と人となりが合いそうと感じたのに加えて、その企業では、当時まさにセキュリティの知見を必要としていました。この方がジョインすることで、企業経営が一気に前に進むはず。そこで、私からこの方に「一度、企業の方に会ってもらいたい」とお願いし、選考に進んでいただきました。

選考にあたっては、企業の面談担当者へ「セキュリティに関する課題感や、必要としている知見をその方に伝えてほしい」とあらかじめ依頼。一緒に、事業の社会貢献性や成長性、およびそれを実現するための道筋をご本人へ説明する時間を設けました。

この面談がきっかけで、ご本人の企業へのイメージが好転。転職の意志を固めていただきました。

Webサイトなどに掲載された情報だけでは、スタートアップ企業の実態は把握しきれないことがほとんどです。やはり、直接話を聞くことが大切。「川村さんがいなかったら、実現できなかった転職です」という言葉をいただき、とてもうれしかったことを覚えています。

—— 「この転職希望者はこの企業と合うだろう」など、両者のカルチャーフィットはどのように判断されているのでしょうか?

最も重視しているのは、「起業家とご本人の相性」でしょうか。

私の印象ですが、起業家には「赤い炎」と「青い炎」の2種類のタイプの方がいると思っています。「赤い炎」の方は、情熱をエネルギッシュに表現する起業家。一方、強い思いを内に秘めながら事業を牽引するのが、「青い炎」の方です。

フォースタートアップスの社員は、勉強会を通してそれぞれの起業家と直接お会いしており、その人となりやキャラクターを知っています。ですので、転職希望者とどの企業、どの起業家がフィットするかも、具体的なイメージを持って考えられます

転職希望者ご本人は興味を示されていなくても、私の視点で「カルチャー面でも、スキル面でも、この会社が必ず合うはず」と思うマッチングはあるものです。そんなときに、どうやってその会社に興味を持っていただくか。

最終的な判断はご本人がするものですが、人材支援のプロとして、転職希望者にどのように魅力を伝え、いかに「予期せぬ出会いを生み出せるか」が、自分の腕の魅せどころなのだと思っています。

最終目標は「スタートアップの
経営を前に進める」こと

—— 転職を希望する方が、自分に合ったスカウトメールを受け取るためには、どのような点を意識するとよいでしょうか?

スカウトメールは、私からご紹介できる求人情報と、転職希望者の経験がマッチするかを確認して送っています。転職希望者の方のお時間をいただきますので、必ずご紹介できそうな求人をいくつか用意するのは欠かせない作業です。

転職希望者の方には、職務経歴書に、定量的な実績をできるだけ書いていただきたいと思っています。その理由は、「何ができる方なのか」を企業側に伝えやすくなるから。これらに限らず、転職を決意した背景など、できるだけ多くの情報を提示してもらえると、その方の考えや価値観が分かるので、フィットした求人のご案内がしやすくなります。

加えて「転職後、何がやりたいか」の希望を記載いただいていると、よりそれに沿ったご提案や求人紹介がしやすくなります。

—— 転職希望者は、どのようにヘッドハンターや転職エージェントを活用すべきだと思いますか?

多くを頼りすぎず、「エージェントに任せること」と「自分でやること」を分けて考えていただくといいと思います。

例えば、企業や求人の情報を持っているのはエージェントです。しかし、「将来的な目標を考える」といった内省は自分でやらなければなりません。自己理解を深めるための対話は行いますが、自分を深く見つめ、決断するのはご自身で行うことです。

どのエージェントを頼るかを迷うこともあると思います。ヘッドハンターと人としての関係性を築けることも重要ですが、ほかにも大切だと感じるのが、「ヘッドハンター個人ではなく、会社として支援してくれているか」

チームとして支援してくれる会社は、そのぶん幅広い選択肢を提示してくれるはず。私自身も、転職希望者の方のキャリアや人となりを同僚に伝えて、「どういう会社がフィットすると思うか」「相性の良さそうな起業家に心当たりはないか」などを聞き、ご提案に活かす場合もあります。

—— 近年は、生成AIで転職希望者と企業とをマッチングするケースも増えていると聞きます。この流れをどう受け止めていますか?

AIは希望する職種や年収といった「情報」で転職希望者を捉えますが、本来であれば「個」として見なければならないと思っています。

例えば「成長したい」転職希望者と「成長機会の多さ」をうたっている企業のマッチングは、間違いではなくても、ちょっと安直ですよね。大切なのは、転職希望者の言葉の背景を知ること。心の奥底にある思いや悩み事も把握した上で、今後のキャリアをご提案できるのが、われわれが介在する価値でもあると思います。

フォースタートアップスでは、起業家の熱量を受けて転職希望者を紹介するだけでなく、その企業に必要と思われるポジションを提案することもあります。これらはすべて、スタートアップ企業の経営を前に進めるための提案であり、生成AIにはできないことだと思います。

—— 最後に、川村さんご自身の今後の目標をお聞かせください。

自分に関わってくださったすべての人を幸せにしていきたいです。

ご相談いただいた転職希望者がスタートアップに興味を持っていただけたらうれしいですが、相談の結果たとえ「自分には合わない」という結論になっても、それはご本人の新たな気づきになりますよね。

関わる人に常に何かしらのメリットを与える存在になる。この思いを大切に持ち続けながら、転職希望者はもちろん、起業家が経営を前に進めるための支援を今後も積み重ねていきたいです。

文=御代 貴子/写真=舛元 清香/編集=伊藤 駿(ノオト)

※各記事の内容や経歴は、インタビュー当時のものです。

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