「新しい技術」が押し寄せる時代に身につけたい脳内習慣

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「AIは人類を滅ぼしてしまうのではないか?」「フィンテックでメガバンクは大リストラ時代を迎える?」

この2〜3年、新聞などメディアでは連日、こうした刺激的・悲観的な内容の記事が多く見受けられ、新しい技術が自分たちにとってチャンスなのか、脅威なのか、ソワソワと気になることが少なからずあります。

今回、UCLAで脳神経科学を専攻し、同分野でのアプローチを企業と協働で推し進めているDAncing Einstein社の青砥瑞人氏を交え、実際にビジネスパーソンと多くの議論を重ねていくと、

新しい技術を活かせる人の脳内パターン

があるのではないか、ということが見えてきました。

本記事では、この「新しい技術を活かせる人が持っている脳内パターン」を実例を交えて紹介し、自分自身がこのパターンを持っているかどうか? そして、このパターンを持つにはどうすればよいかを深掘りします。

本記事のアウトラインです。

INDEX読了時間:6

「新しい技術」を活かせる人が脳内で繰り返し行っていること

「新しい技術」を活かせる人

青砥氏はまず、人工知能・機械学習その他の「新しい技術」をいち早く取り入れ、実験している人たちについて、以下の3つのポイントを指摘しました:

① 新しい刺激が入ってきたとき、それを「恐怖だ!」と捉えるフィルターをクリア

② 実際に触れてみることで「予想と全然違う!」という刺激を活かし、意欲が高まる

③ 成果がすぐに出なくても「でも意味があった!」と受け止める習慣がある

これを図にすると、以下のようになります。

新しい技術(例えばAI)に対するポジティブなサイクル

青砥氏は特に、「成果が出ても出なくても、今回のチャレンジはよかった」と捉える力がある個人、あるいはそういう雰囲気を作っている組織が、強力な成功のサイクルを作りやすいと指摘します。

例えば、米国データロボット社などが提供する、高度な機械学習を半自動で実行可能なソリューションは、世の中に加速度的に増えています。 こうしたツールを、自分の仕事のデータに当てはめて遊んでみると、今までにないような分析ができるなど面白いことが起きます。 ただ、それは今日・明日・来月の仕事の成果をすぐに向上させるようなものではない。

このようなときにも上記の「今回のチャレンジは良かった」と捉える力のある人は、新技術にお金を払ってチャレンジしたことそのものを、脳内で「GOOD」なこととしてその感情と共に記憶します。

すると、次に新しいものが出てきたときに、「前回、とりあえず触ってみたのが良かった!」という長期記憶が形成されているため、今回もまた新しいものに手を出す。

そして、その記憶が後押しとなって、①のキョウフをあまり感じることなく、どんどんまた新しいものに取り組む。新しいものを触るので、また②の予想外の刺激を受け、③のループに戻ってくる。

この繰り返しを、新しい技術が登場するたびに何度も繰り返すことで、サイクル全体が何度も周り、そのうちに直接的な成果に結びつくこととなる。

以上が、「新しい技術」を活かせる人が脳内で繰り返し行っていることになります。

原始脳が恐怖して新しい技術を遠ざけてしまうパターン

原始脳が恐怖して新しい技術を遠ざけてしまう人

一方で、このサイクルを阻害してしまう典型的なパターンが、「いつか人工知能は人間を滅ぼしてしまうのでは?」「人間の仕事の多くを人工知能が奪ってしまい、これから大変な未来が待っているのでは?」といったような、「キョウフ」が増長されてしまう流れです(下図)。

メディアなどでの「AI脅威論」を受けるとこうなる

こうした「キョウフ」は、人間が原始動物だった時代に、肉食動物などと出会ってしまったときにすばやく逃げたり、縮こまって身を隠したりするために発達した脳の機能であるため、読み手の人たちはメディアが語る「脅威論」にどうしても本能的にとっさに反応してしまいます。

その結果、そうした記事は実態以上に反響を呼び、多くの人にSNSなどで拡散され、「実際に新しい技術を触る」より前に、「これは怖いもの、避けるべきもの」となってしまいます。

こうして、「新しい技術は、なんだかこわい」「とりあえず、これに触れておくのは止めておこう」ということで、多くの人が「新しい技術」に触れる機会を奪われてしまいます。

「キョウフ」に訴えかける記事は、人の反響を呼び起こしやすく、そうした切り口の記事がメディアから少なからず配信され続けるのも、この構造を増長してしまいます。

脳を自分で退屈させて新しい技術を遠ざけてしまうパターン

脳を自分で退屈させて新しい技術を遠ざけてしまう人

もう一つ、恐怖と並んで、人を新しい技術から遠ざけてしまうのが「分かったつもりになる」というパターンです。

脳では、「予想したこと」と「実際に起きたこと」が違うほど、脳内に「ドーパミン」が放出され、それによって興味・関心が高まることで、さまざまな試行錯誤の取り組みのきっかけをつくります(下図)。

「オドロキ」感情が生まれ「ドーパミン」が放出される

ところが、「人工知能」や「ドローン」など、いろんな話を間接的にだけ聞いて、

「まあ、人工知能の限界はしょせんこんなところ」

「ドローンのことは、だいたい分かっているよ」

と実際に触って刺激を受けない人たちは、脳内にドーパミンが発生することなく、新しい技術に対しても行動を起こさずに終わってしまいます。

逆に、「AIなんてこんなもん」と分かったつもりになるとこうなる

例えば、

「ドローンのことを言う割には、一度も自分で購入したり、飛ばしたりしたことがない」

「シェアリングエコノミーとか言う割には、実際にAirBnBに泊まったことがない」

といった人たちが、このパターンに当てはまります。

「新しい技術」への取り組みが生み出すゴールデンサークル

さて、この「新しい技術」への積極的な取り組みの連続は、ものすごいゴールデンサークルを生み出し、この取り組みができない層との格差を大きく広げてしまいます。

その点を、上場しているコンサルティング会社「シグマクシス」で、機械学習など最新技術を積極的に取り入れてチームを運営するなど、ディレクターとして活躍する柴沼氏は以下のように語ります。

今の時代、例えばコンサルティング会社のように、稼働した時間をベースにクライアント企業にチャージする会社の場合、データ・ロボットなどのツールを使うと、それまで若手のコンサルタントなどが何日もかけて行っていたような詳細な分析が、はるかに短い時間で実施できてしまいます。

結果、コンサルタントはそうした分析を基にした付加価値の高い部分に仕事を集中でき、半分くらいの時間で、従来と同じか、それ以上のアウトプットを出すことができます。

そこで重要になるのが、「余った時間」の使い方。個人としても、コンサルティングを行うチームとしても、自由にできる時間が飛躍的に増えるわけですが、その時間に「とても短期的な説明や、合理性では説明のつかない、面白いことに時間・お金を使って遊ぶ」というのがキモになります。

実際、以前、海外のある国に “遊び” に行ったとき、そこで出会ったベンチャーが非常に優れたソリューションを持っていました。そこでこちらは、“面白いから” ということで、彼らの成長を手弁当でお手伝いし、日本進出などもサポートしたんですが、「柴沼、これだけお世話になってるから、コンサルフィーを払わせてくれ」と言われました。

そこで、こう言ってやったんです。「いいよいいよ、お金なんて受け取らない。好きでやってるんだから。どうせなら、大きく成長した後に、大きな案件として依頼してくれよ」と。そうしたら、相手は目を丸くして「お前、本当にいいやつだなあ」と(笑)。そして数年後、彼と交わした会話の通り、大きなコンサルティング案件として、彼らと仕事をすることになったというわけです。

このように、「新しい技術」をいち早く取り入れる習慣が身についている組織は、

  • 技術によって余暇時間ができる
  • 余暇時間で “面白い” “短期では取り組めない” ことに興味本位で取り組む
  • そうした “面白い” ものの中から、長期的にさらに付加価値が高い仕事が増える
  • こうした仕事とさらなる新しい技術の導入で、さらに余暇時間が増える

という「ゴールデンサークル」に入ることができるようになるのです。

「新しい技術」と「余暇時間にうまく遊ぶ」という2つの組み合わせが、このサイクルの重要な要素となります。

かくして「新しい技術」を取り入れられない側との格差は拡大し続ける

以上のように、「新しい技術」を取り入れ、さらに「余暇時間をうまく遊ぶ」側が生産性を上げ、興味・関心をくすぐる仕事にどんどんシフトしていく一方で、「新しい技術」を取り入れられない側は、こうした相手と同じアウトプットを求められるため、長い労働時間を余儀なくされます。

そして、とても「余暇時間を使ってうまく遊ぶ」ことなどできず、結果としてますます生産性の低い仕事を行わざるを得なくなり、新しい技術で生産性も上がらず、どんどん追い詰められてしまうこととなります(下図)。

かくして、世の中は「AIを使う層」と「AIを使わない層」に2分される

こうした兆候は、すでに機械学習などを導入している組織、していない組織の間などで顕在化しつつあります。こうしたツールを目の当たりにしたビジネスパーソンたちは、以下のような声を寄せています

(機械学習の最新のツールのデモを見て)衝撃的すぎて言葉が出ないです。過去のプロジェクトでモデルを創る系のことをやりましたが、3カ月かかってようやく完成するレベルのことをものの10分で成し遂げてしまうことに衝撃を受けました。予測系の仕事をするコンサルタントやアナリストはいらなくなりますね(30代/元コンサルティング/現教育関連ベンチャー代表)

これ、やばいですね。今までだとモデル作成に手間がかかるんで、データ化→MLの検証/導入に対して「やる/やらない」っていう議論が一応成立してましたけど、これだと「やる」しかない。そうなると「やる/やらない」時代だと「やらない」可能性もあるので真剣に向き合ってこなかった。そもそも日常の業務をデータ収集に最適化するというところから、本気になって再設計しないといけなくなり、そこをやれるかどうかで、かなり決定的な差になってしまう(40代/大手不動産・新規事業担当)

こうした格差が生み出される時代は、すぐそこまで迫っているのかもしれません。

新しい技術を取り入れる習慣のチェックリスト

では最後に、具体的にこうした「新しい技術」について、自分がどんどん活用する側にいるのか、それとも活用できない側にいるのかーーその脳内的な習慣についてチェックする一つの方法が、下記の各種サービス・製品に対して実際に着手した経験の有無を確認することです。

  1. Oculus GOを購入した
  2. Amazon Alexa/Google Home/Clovaのうち一つ以上を購入した
  3. Airbnbで宿泊したことがある
  4. Uber/Lift/Grabのうち一つ以上を使ったことがある
  5. ビットコイン/イーサリアムなど一つ以上の仮想通貨を取引したことがある
  6. Apple TV/Amazon Fire TV/Google Chromecastのうち一つ以上を購入した
  7. メルカリを使ったことがある
  8. Pokemon GOをプレイしたことがある
  9. 自分個人のスマートフォンを所有している
  10. Uber Eatsを利用したことがある

上記の質問を、新しい技術を積極的に取り込み、日々仕事の中で挑戦している層の面々に行ったところ、その平均的な回答数は「5.75」となりました(下図参照)。

リスト中の新サービスの購入・利用経験分布

これらはすべて、一つあたり最高でも3〜4万円ほど使えば取り組むことができる内容。そして、それぞれがメディアなどにも多く取り上げられている、最新の技術動向やサービスとなっています。

まずは個人から、こうした新しいサービスを使ってみて、そのチャレンジを続けるサイクルを自分の脳内につくることが、今回触れた「新しいゴールデンサークルに入れるかどうか」の一つの分水嶺になるかもしれません。

[編集・構成]doda X編集部

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