COO(最高執行責任者)とは? 意味や役割、キャリアパス、CEOとの違いについて

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従来の日系企業では、「代表取締役社長」という役職者が、経営方針の決定や業務の執行を行うのが一般的でした。しかし、近年はこの2つの役割を分けて考える動きが見られます。COO (Chief Operating Officer)はまさに、企業の最高責任者であるCEOの下で、業務執行を統括するポジションです。

企業のナンバー2といわれるCOOには、どのような役割が求められているのでしょうか。ここでは、COOと他の役職の違いを確認しながら、COOが置かれる理由やポジションにふさわしい人材のイメージについて解説していきます。

INDEX(読了時間10分)

COO(Chief Operating Officer)とは

COOという言葉は、かつてはあまり日系企業では耳にする機会がありませんでした。日本ではCEOがCOOの役職も兼ねるといったケースが多かったためです。
しかし、近年はグローバルな大手企業を中心にCOOというポジションを設ける動きがあります。はじめに、COOの基本知識とその役割について解説します。

COOとは

「COO」とは、「Chief Operating Officer」(チーフ・オペレーティング・オフィサー)の略称で、和訳すると「最高執行責任者」です。名称から見てもわかるように、企業を執行するリーダー役かつ、最高責任者となります。

COOは、CEOの決定に従い、実質的に企業を動かしていくナンバー2のポジションです。CEOが示す企業としての目標に向かって、業務の執行を行います。CEOを補佐する立場となるため、当然ながら序列的にはCEOよりも下です。

しかし、「経営2トップ」「車の両輪」といった形容が聞かれるほど、重要な立ち位置にあります。COOは、日本の会社法が定める役職ではありません。
そのため、取締役を兼任している場合には、「最高執行取締役」といったように肩書きが変わるケースも見られます。

主な業務内容/役割

COOの役割は、企業運営の実務的な業務遂行です。CEOの企業戦略を具現化するための戦術を考案し、実行に移します。
ただし、COOの役割は業務執行の最高責任者だけではありません。企業のPL(Profit & Loss Statement)、つまり損益についての責任を背負う存在です。

仕事内容は、企業や事業内容によって大きく異なりますが、マネジメント層を束ねたり、企業の目標達成に向けた方向へと牽引したりする役割を担っています。人や資金、情報といった企業リソースを最大限に有効活用していくために、配置・配分を決定することも役割の一つです。
各事業の進行を把握、管理しながら、時には現場に出て自らが先導する場合もあります。

COOが求められている理由

コロナ禍をきっかけとして、COOの需要には変化が見られます。これはコロナ禍を通じて、これまで後回しにされてきた課題が浮き彫りになり、どの業界も企業の再編を迫られているためです。

変革を実現すべく、優秀な執行役を求めている企業は少なくありません。DXへの対応など、可及的速やかに取り組む必要のある課題が山積みです。特に日系の企業では、旧態依然とした体制からの脱却が急がれています。

多様化する働き方に対する高度な人事管理や、持続可能な社会を目指す国際的な目標であるSDGsへの対応など、時代の変化に対応すべく様々な意思決定が求められる中で、新しいやり方を断行できる人材の確保が急務となっているのです。

日本と米国のCOOの違い

米国企業では、株主を代表する取締役会が業務執行を行う役職を任命するのが一般的な形です。COOは執行側の役職の一つですが、会長がCEO、社長がCOOというケースもあります。

日系企業では、社長がCEOで、副社長や専務など他の役員がCOOとなっている形が見られます。
また、代表取締役がCEOとCOOを兼任しているというケースも多い傾向です。

CEO、CFO、その他役職との違い

COOと混同しやすいCEO、CFOとの違い、またその他の役職について解説します。

CEOの役割

CEO(Chief Executive Officer)は、「最高経営責任者」。企業のトップに位置し、企業価値全体を背負う存在です。COOが短期的視野で業務執行に当たるのに対し、CEOは中長期的視野を持って企業経営の全体的な方針を決定していきます。
既存事業の運営をCOOに託し、自らは事業戦略を考え、新規事業に着手するのが特徴です。
COOが守りだとすれば、CEOは攻めの役割を持つともいえるでしょう。

CFOの役割

CFO(Chief Financial Officer)は「最高財務責任者」、いわば企業の番頭役ともいえます。企業財務のエキスパートとして、経営戦略に即した財務戦略を策定し、企業価値の向上を図ることが役割です。具体的には、社内の会計部門の統括管理や、投資に際しての資金調達、交渉の役割を担います。

その他「CxO」について

COOのほかにも、各業務の最高責任者を意味する「Chief 〇〇 Officer」という役職を置く企業が増えてきています。COO以外のポジションについて解説します。

  • CRO
    Chief Risk Officerの略で和訳すると「最高リスク管理責任者」。災害や、テロ行為、経済の混乱など、企業が直面するあらゆるリスクに対応する部門の最高責任者です。企業全体としてのリスク回避のため、経営的な視点を持って対応を図ります。
  • CAO
    Chief Analytics Officerの略で和訳すると「最高分析責任者」。企業戦略に照らして社内や、社外のデータ収集とその活用を行う部門の最高責任者です。企業が保有するビッグデータを事業に活かす動きが強まる中で、重要性を増しています。
  • CLO
    Chief Legal Officerの略で和訳すると「最高法務責任者」。企業の法務に関する業務全般の最高責任者です。訴訟や法的規制に精通し、企業の法的リスク回避を行います。弁護士資格を保有して、企業の顧問弁護士を兼務しているケースも見られます。
  • CTO
    Chief Technical Officerの略で和訳すると「最高技術責任者」。企業の開発部門の最高責任者です。IT企業では、自社の製品やサービスの技術面全般に責任を負います。企業規模によって仕事内容の幅が異なり、実務に携わっている場合も見られます。
    CTOについてはこちらで詳しく解説しています。
    CTOとは? 役割やCIOなどとの違い、キャリアパスについて解説
  • CIO
    Chief Information Officerの略で和訳すると「最高情報責任者」。社内向けのIT・機関システムや情報管理、自社内の運用改善を担当する部門の最高責任者です。情報を事業に役立てるための戦略立案や、提案を行う場合もあります。
    CIOについてはこちらで詳しく解説しています。
    CIOとは? 企業経営における役割と重要性について解説
  • CKO
    Chief Knowledge Officerの略で和訳すると「最高知識責任者」。知的財産管理や、特許管理などを担当する部門の最高責任者です。企業内に蓄積されたノウハウや情報を整理し、業務フローの改善など有効な活用を図ります。
  • CMO
    Chief Marketing Officerの略で和訳すると「最高マーケティング責任者」。企業が行うマーケティング全般に関わる最高責任者です。マーケティング戦略の立案・推進および、投資対効果の最適化の役割を担います。
    CMOについてはこちらで詳しく解説しています。
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  • CSO
    Chief Strategy Officerの略で和訳すると「最高経営戦略責任者」。CEOの右腕的立ち位置で、企業の中長期計画や成長戦略立案を行います。さらに実行プロセスを構築し、推進役を担います。
  • CHRO
    Chief Human Resource Officerの略で和訳すると「最高人事責任者」。企業の重要な資産ともいえる、人的リソースに対して採用・教育といった管理全般の業務を担います。一般的な人事の管理職とは異なり、経営視点を持った経営幹部としてのポジションです。

COOのやりがいやポジションに就くメリット

COOのポジションに就く最も大きなメリットは、CEOの企業戦略を具現化する業務執行の最高責任者となれることです。他の役員と比較しても、役職として一段と重みが増します。業務執行については、自分で最後まで決められるため、自身の好むやり方で進めることが可能です。

もちろん、一方で執行やPLの大きな責任もありますが、やりがいという点では経営者に次ぐといっても良いでしょう。勤務先の企業規模を小さくしてでも、腕を試してみる価値は十分にあります。

収入面では、メリットがあるとは一概にいいきれません。なぜなら、COOの年収相場については、企業によってまったく異なるからです。大企業であれば、年収数千万円というケースも考えられますが、企業規模によっては年収が下がる可能性もあります。

またスタートアップやベンチャーでは、一定の報酬に加えてストックオプションで支払われるケースも少なくありませんが、リスクにも目を向ける必要があります。

さらに、上の役割であるCEOを目指していくためには、経営に近い立場での高い実績が必要です。業務の広さや多様さ、裁量権の大きさ、圧倒的なマネジメントスケールは、COOのポジションだからこそ体験できるものです。

COOの先のキャリアパスとしては、起業するケースも多く見られます。CEOの近くで経営のノウハウを学び、企業業務を実際に指揮することで、自分の事業を立ち上げるだけの高いスキルを体得することが可能です。

COOに求められること

COOが担うべき役割は、「適時、適切な判断ができる」ことです。
COOは、CEOの決定に従って動きますが、その下にはさらに多くのマネジメント層がいるため、配下の人材を束ねて、結果を出していくには、方向性をしっかりと示さなければなりません。

もちろん、適切な判断を下していくためには、事業への優れた理解力も必要です。執行するトップとしての実行力や、マネジメント能力、業務の推進力が求められることはいうまでもありません。
日系企業の中堅以上の企業で役員の求人に声をかけられるのは、ほぼ経験者のみです。

企業のナンバー2となるポジションを与えるのに、わざわざ外部から登用することには大きな決断が必要です。社内では得がたい実務経験の持ち主であり、社内の人間を納得させられるだけの人材でないとなりません。そのため、強力な執行力を持ちつつ、企業の文化やルールを良く理解し、尊敬されるような人間性を持っていることが重要です。

いきなりトップに近い位置に入るだけでも、かなり難しい状況にあります。若手がCOOに採用される可能性がまったくないとはいえませんが、実績を重視する中堅以上の企業ではあまり考えにくいでしょう。

一方、スタートアップやベンチャーの場合では、CEOとCOOの距離が近く、規模の大きな企業とは異なる特性が求められます。これまでも解説したように、COOの立ち位置はあくまでナンバー2となります。
スタートアップやベンチャーでうまく関係性を構築するためには、その点を十分にわきまえることが大切です。

「CEOの意志に従って執行役となる」という点では、かなり大変なポジションといえるでしょう。規模の大きな企業にも増して、冷静さと度量の広さが必要です。

COOになるためのキャリアパス

COOは、役員の中でも特にハイクラスのポジションです。なりたいと望んでも容易に手に入る地位ではありません。ではCOOを目指すにはどうすればいいのでしょうか。

COOになる方法は?

社内でのステップアップを目指す

COOになるためのキャリアパスの順当なルートは、社内での昇格でしょう。特に日系企業では、自社かグループ企業から役員登用されるのが一般的です。ナンバー2のポジションに外部人材を登用すると、社内の大きな反発を招く恐れがあるため、消極的な姿勢であることが多いと考えられます。
メイン事業の業務部門や、経営企画部門などで責任のある仕事を任され、その際の業務執行能力が認められてステップアップにつながる例は珍しくありません。

コンサルタント/専門性の高い職種からの転職

業務改善や業務改革を専門としたコンサルタントの場合、さまざまな企業の課題解決をサポートした実績からCOOに招かれる場合もあります。クライアント企業の担当部署や管理職からヒアリングをし、状況把握を経て課題の解決に取り組むといった経験は、COOとして業務執行に当たる上でのベースとなるでしょう。

転職やヘッドハンティング

役員経験がない場合でもCOOになれるケースとしては、ある分野で突出した能力があるといった人材であれば可能性が考えられます。例えば、マーケティングにおけるプロ中のプロとして認められており、業界の中で際立つ存在であれば、その能力に対するニーズからCOOへの登用もあり得るかもしれません。

世界的な大企業で活躍している人材に対して、スタートアップやベンチャーなどから声がかかる可能性もあります。ただ、この場合には、企業規模が異なることは認識しておくべきでしょう。

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COOに関する求人について

COOのような役員の場合は、オープンに採用活動が行われることはありません。企業の上層部の人事は、企業の戦略に関わるため、公表されることはなく極秘扱いとなり水面下で動きます。

当該ポジションの新設でない場合は、前任者が辞めるタイミングで募集となります。また、辞任の予定も基本的に発表されることはありません。COOポジションを新設する場合でも、やはり企業戦略に関係するため、基本的には告知されず、秘密裏に採用活動が進みます。

このように、COOのポジションは、一般的な転職活動で容易に目指せるものではありません。ただし、ハイクラス人材に特化し、豊富な情報を保有するエージェントやヘッドハンティングサービスを活用すれば、COOへの道が開ける可能性があります。

企業のナンバー2としてCOOの役割はさらに広がる

COOは企業の実務を担う社員の事実上のトップであり、業務遂行の大きな達成感が得られるポジションです。
これまで国内企業では、あまり採用されてこなかったポジションですが、市場のグローバル化や社会変化への対応策として、新設する動きが増えています。蓄積してきた経験と知識の集大成として、COOというキャリアの選択も考えてみてはいかがでしょうか。

監修
澤本 静
パーソルキャリア(株) エグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント

大手人材総合サービス会社にて、法人営業、カウンセラー、新規事業立上げ、マネジメント業務に携わった後、最大手医療ポータル運営会社にて新規事業開発に従事。その後、当社に参画。経営企画・新規事業企画職全般の転職支援に強みを持つ。

[編集・構成]doda X編集部

この記事のポイント

Q.COOとは?
A.「COO」とは、「Chief Operating Officer」(チーフ・オペレーティング・オフィサー)の略称で、和訳すると「最高執行責任者」です。名称から見てもわかるように、企業を執行するリーダー役かつ、最高責任者となります。
Q.COOとCEOはどちらが偉い?
A.COOは、CEOの決定に従い、実質的に企業を動かしていくナンバー2のポジションです。CEOが示す企業としての目標に向かって、業務の執行を行います。CEOを補佐する立場となるため、序列的にはCEOよりも下です。

Q.COOとCEOの違いは?
A.CEO(Chief Executive Officer)は、「最高経営責任者」。企業のトップに位置し、企業価値全体を背負う存在です。COOが短期的視野で業務執行に当たるのに対し、CEOは中長期的視野を持って企業経営の全体的な方針を決定していきます。
既存事業の運営をCOOに託し、自らは事業戦略を考え、新規事業に着手するのが特徴です。
COOが守りだとすれば、CEOは攻めの役割を持つともいえるでしょう。
Q.COOに求められることは?
A.COOが担うべき役割は、「適時、適切な判断ができる」ことです。
COOは、CEOの決定に従って動きますが、その下にはさらに多くのマネジメント層がいるため、配下の人材を束ねて結果を出していくには、方向性をしっかりと示さなければなりません。

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