転職で年収が下がるケースとは?ミドル層の転職活動のポイントを解説

転職を考える上で「年収」は大切な条件のひとつ。経験を豊富に積んだミドル層が転職を検討する際には、年収が下がらないかを懸念してなかなか踏み出せない、といった人も多いでしょう。現職で評価されていたり、家族を持っていたりするとよりその傾向は強くなることも。この記事では、転職で年収が下がる主なケースと、その年代別の傾向について解説します。転職によって年収が下がらないようにするための対策や、年収が下がったとしても転職すべきか迷った際の考え方にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

転職で年収が下がる割合は?

厚生労働省が公表した「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、2022年に転職によって年収が上がった人は34.9%で、下がった人は33.9%でした。

また、dodaが2023年7~12月に転職した40歳以上の人のデータを分析した結果では、転職後に年収が増えた人の割合は、50%を超えており、減った人の割合よりも高いという結果が出ています。

参照:「ミドル層の異業種・異職種転職実態レポート」

上記dodaによる調査のとおり、半数以上の転職者が転職後に年収アップを実現している状況にあります。その一方で、年収が下がっているケースも決して少なくない現状もあります。

転職によって年収が上がるか下がるかは、転職の仕方や状況、転職で何をかなえたいかによってさまざまであるといえるでしょう。次の章で、転職で年収が下がるケースを詳しく見ていきましょう。

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転職で年収が下がるケース

転職によって年収が下がる主なケースを、5つご紹介します。現在の年収を維持したい、もしくは年収を上げたい場合には、下記のようなケースに留意する必要があります。

未経験の業種・職種に転職した

転職先の業種・職種を今まで経験したことがない場合、年収が下がる可能性があります。中途採用者は即戦力となることを求められるケースが多く、特にミドル層においてはこの傾向が顕著なためです。

ただし、後述するように、異業種・異職種への転職によって必ずしも年収が下がるというわけではありません。今までに培ってきたスキルや経験が活かせる業種や職種を選べば、年収の維持もしくはアップを実現することは可能です。

役職が下がった

転職によって役職が変わることも、年収が下がる要因のひとつです。例えば、前職で課長職だった人が転職先で課長補佐や係長として入社するようなケースでは、役職手当の金額が現職と異なる(下がる)などの理由から年収に影響を与える可能性があります。

ただし、役職ごとの給与水準は、企業によってさまざまです。役職が下がるからといって、必ず年収もダウンするとはいえません。

なお、入社時点では年収が下がったとしても、数年後には転職前と同水準、もしくはそれ以上の年収になることも想定できます。例えば、課長候補などのポジションで入社した場合、将来的に課長職を任せたいという期待が込められていることから、入社後の成果次第で年収アップが期待できるからです。

給与体系の異なる企業に転職した

前職と給与体系が異なる企業に転職することも、年収が下がる要因のひとつです。例えば、各種インセンティブや営業手当、残業手当に関する規定の違い、ボーナスの計算方法など、年収に影響を与える要素は数多くあります。

求人票に掲載されている年収はあくまでも一例であり、入社時の条件によって変動する可能性があることから、必ずしも求人票の年収どおりになるわけではない点に注意が必要です。選考に進み、内定が出た際には内定承諾の前に給与などの待遇面に関する不明点は解消しておく必要があるでしょう。

働き方が変わった

勤務形態の変化によっても年収が下がる場合があります。例えば、前職で勤務時間が長くなりがちだった人が、業務の繁閑にかかわらず残業が少ない職場へ転職するようなケースでは、結果的に年収が下がる可能性があります。

たとえ年収が下がったとしても、働きやすさやワーク・ライフ・バランスの改善が見込める場合もあるでしょう。そのため、転職で何を実現したいか、優先したいのかを見極めることが大切になります。

地方企業に転職した

UターンやIターンなど首都圏や大都市から地方企業へ転職する場合も、年収が下がる可能性があります。給与水準は地域によって異なります。2022年に厚生労働省が行った調査によると、平均月収の上位はいずれも大都市となっています。そのため、大都市から地方企業への転職では年収が下がる可能性を念頭に置いておく必要があるでしょう。

参照:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省ホームページ

【年代別】転職で年収が下がるケースの傾向

年代別に見た場合、転職に伴って年収が下がるケースにはどのような傾向があるのでしょうか。長年にわたり、さまざまな転職希望者を支援してきたキャリアアドバイザーへの取材をもとに、年代別に見られる傾向を解説します。

20代の場合

20代の転職で年収が下がるケースとして多いのは、未経験の業界・職種への転職です。特に20代後半で、リーダーポジションや管理職に就いている人はこのケースに該当しやすい傾向があります。

ただ、30代を目前に、あらためて自身のキャリアを考え直した結果、新たなキャリアへと進む選択をし、異業種や異職種への転職を決める人は少なくありません。その場合、一時的に年収が下がったとしても中長期的な視点で見ると現職にとどまるよりも得られる経験や待遇の向上が図れる場合もあります。

30代の場合

30代になると、役職やリーダーポジションに就いている人も多いでしょう。しかし、転職先で同じ役職・ポジションのまま入社できるとは限りません。転職先で役職が下がった結果、年収が下がることも少なくありません。例えば、課長職から課長補佐、またはリーダー候補として入社するといったケースが該当します。

理由としては、入社当初からいきなり管理職として迎え入れた場合、社風や規則、その会社ならではの仕事の進め方などがつかみきれないままマネジメントをすることになり、その結果、既存メンバーとの軋轢が生じる懸念があります。その結果、思うようにマネジメントができず、早期退職につながる可能性も考えらます。そのため、企業側としては、まずはリーダー候補・管理職候補として入社してもらい、数年後に管理職に登用する想定で採用することが多いのです。

そのほか、30代はライフイベントやライフステージの変化が発生しやすい時期ともいえます。「家族と過ごす時間をより多く確保したい」「地元に戻りたい」といった理由から、残業が少ない企業や地方企業に転職する人もいるでしょう。その場合、結果的に年収が下がるケースも考えられます。

40代の場合

40代も30代と同様、役職が下がったことが年収ダウンの要因となるケースが多く見られます。前職で部長職だった人でも、転職先で入社当初から部長として迎え入れられるとは限らず、役職手当が前職よりも下がる可能性があるからです。

ただし、部長候補や幹部候補として入社する場合には、成果次第で数年後に部長職に登用されることが想定されます。転職直後は一時的に年収が下がったとしても、ゆくゆくは前職と同水準の年収に戻るか、それ以上の年収を得られる可能性があります。

50代の場合

意外に感じるかもしれませんが、50代で未経験の業界や職種に転職するケースは少なくありません。その背景として50代となり、役職定年が近づいてきたタイミングであらためて今後のキャリアを再考する人が多く、未経験の仕事への挑戦を選択し転職する人が一定数いることが挙げられます。

実際、近年は40代以降の転職成功率が高まっています。dodaが実施した調査においても、40歳以上の転職経験者のうち、約65%は異業種への転職を成功させています。こうした状況が、ミドル世代からでも新しい仕事に挑戦しようとする人の背中を押しているのかもしれません。

ただ、年収面においては、現職と転職先の業種・職種との関連性にもよりますが、まったくの未経験業種や職種に挑戦する場合は、年収が下がる可能性が高くなることは事前に想定しておくとよいでしょう。

参照:「ミドル層の異業種・異職種転職実態レポート」

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ミドル層が転職で年収を下げないための対策

ミドル層の転職で、年収が下がらないようにするには、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。特に意識しておきたい4つのポイントをご紹介します。

自分の経験・スキルを活かし活躍し続けられる環境かを見極める

転職で年収が下がらないようにするには、自分がこれまで培ってきた経験・スキルを評価してもらった上で、即戦力として活躍し続けられる会社を選ぶことが重要です。そのためには、自分が力を発揮できるのはどんな環境なのか、今までの経験や培ったスキルを棚卸しし、自分に合う環境のイメージを具体化しておく必要があるでしょう。

例えば、「営業職のリーダーポジションで大きな案件をまとめた経験」がある場合、その過程でまとめ上げたメンバーの人数、コミュニケーションを取ったパートナーの業種や職種、そこで発揮できた自分の強みといった点を深掘りしておくことをおすすめします。あわせて、今までのキャリアの中で思うように自分の実力を発揮できなかった環境についても振り返りを行うことで、自分に合う環境・合わない環境の共通項を見つけられることもあります。

ミドル層で初めての転職という人の場合は特に、1社での社歴が長い分、その会社の文化や仕事のやり方が染み付いていて、転職先の社風にうまく順応できず苦労する、ということも考えられるでしょう。そのようなミスマッチを防止するためにも自分に合う環境のイメージを具体化することは非常に重要です。

また、今回の転職でかなえたいことは何なのか、それが複数ある場合はその優先順位を整理しておくとよいでしょう。優先順位の高いものについては面接の際に対話を重ねることで、入社後それがかなう環境かどうか、すり合わせをしていく必要があります。

面接では転職後の貢献イメージを具体的に伝える

転職で年収が下がらないようにするには、入社後、どのように転職先の企業に貢献できるのか、具体的なイメージを印象付けることが重要になってきます。企業の強みだけでなく、課題感を把握した上で、それに対して自分の強みやこれまでの経験がどのように活きていくのか、具体的に伝えるようにしてください。あわせて、多角的な視点や視座の高さをアピールできるとよいでしょう。

特に、ミドル層・ハイクラス層の転職では、企業側は転職者をどの等級・役職で受け入れるのか判断が難しい場合、面接で受けた印象を加味して最終決定をします。だからこそ転職者は、事業にどのように貢献できるかを、できるだけ具体的に伝えることが大切なのです。

ミドル層・ハイクラス層であれば、自分も面接官を経験しているケースが少なくありません。自分を客観視した上で、自分が面接をするなら、どのような人を良い待遇で採用したくなるかを考えてみてはいかがでしょうか。

成長企業や成長領域の事業を行っている企業を選ぶ

業績が伸びている企業や、今後成長が見込める業界に転職することにより、年収を維持または上げられる可能性があります。こうした業界でも、未経験者として転職する場合には入社当初の年収が下がることも少なくありません。ただし、中長期的に見ると、入社後の貢献度によって年収が上がり、結果的に転職前と同じ水準かそれ以上の年収となることが見込めます。

また、急成長している企業では、事業拡大のために即戦力となる人材をいち早く採用したいというケースも多く見られます。こうした企業の場合、優秀な人材が他社に行ってしまわないよう、前職の年収よりも高い水準の条件を提示する可能性があります。

転職エージェントやヘッドハンターを活用する

転職エージェントやヘッドハンターといった転職のプロに相談するのも、年収が下がらないようにする方法のひとつです。その際は、求人を紹介してもらうだけでなく、キャリアの棚卸しを行い、対話を重ねることで今後のキャリアについて客観的なアドバイスを受けることができます。プロにサポートしてもらいながら転職活動をすることにより、転職成功につながる有力なヒントが見つかるかもしれません。

また、転職エージェントやヘッドハンターを活用し、企業との間に立ってもらうことで、自分では切り出しづらい年収交渉を行ってもらえるというのもメリットのひとつです。年収は企業からの評価によって決まるので、必ずしも希望がかなうわけではありませんが、交渉可能な範囲で、企業側との交渉を知見豊富な転職のプロに行ってもらえるのは心強いはずです。

もちろん、転職エージェントやヘッドハンターを活用すると、経歴や希望条件を踏まえて、自分に合った求人情報を紹介してもらえる点も大きなメリットです。転職エージェントやヘッドハンターを転職活動の心強いパートナーとして活用することは、年収を下げない転職を実現する上で効果的な方法といえるでしょう。

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年収が下がっても転職すべきか迷う場合の考え方

転職後に年収が下がってしまうかもしれない場合、転職すべきかどうかを判断するにはどうすればいいのでしょうか。考え方のポイントについて解説します。

転職の目的がかなえられるかどうかで判断する

年収が下がっても転職すべきか迷う場合は、転職する目的を整理し、目的としていることが今回の転職でかなえられるかどうかを判断することが重要です。転職を通じてかなえたいことが複数ある場合は、その中でも特に重要度の高いものが何かを考え、優先順位を付けていきます。こうすることで、内定が出た際に承諾すべきか否かの意思決定がしやすくなるからです。

経験豊富なミドル層の場合、現職の給与がすでに一定の水準に達しているケースが少なくありません。例えば、転職活動を始めた当初は転職の目的を“やりたいこと・挑戦したいことができる環境への転職”と定めていても、いざ転職する・しないの意思決定を迫られた際、現職よりも年収が下がるとなると、本来の目的はかなえられそうであっても、「年収が下がる」という一点にとらわれてしまいがちです。このような状況は誰にでも起こり得るので、あらかじめ想定しておき、いざというときに納得感の高い意思決定ができるよう備えておく必要があります。

もちろん、家族のためにも、年収キープや年収アップは大前提の条件であるという人もいるでしょう。その場合は、転職エージェントやヘッドハンターにその旨を事前にしっかり伝えることで、状況や条件に合った求人紹介や転職サポートを受けることができます。転職サービスを利用する場合は、最初の目線合わせが大事だと認識しておきましょう。

転職の目的に沿った判断をするには、転職後のイメージをどこまで膨らませるかが大切です。情報を多角的に収集し、俯瞰的に判断することをおすすめします。不安要素がある場合は、選考過程で確認したり、転職エージェントやヘッドハンターに客観的な意見を聞いたりすることで選択肢が広がることもあるでしょう。

年収が下がる場合の許容範囲を設定しておく

仮に年収が下がるとしたら、どの程度までなら下がってもいいか、具体的な許容範囲を設定しておくこともポイントのひとつです。許容範囲が明確になっていれば、年収が下がることが分かった場合も、転職する・しないの判断がしやすくなります。

許容範囲を決める際には、現状のライフステージや今後のライフイベントを考慮して判断するのがポイントです。一般的に、減少幅が年収の1割以上になると、生活水準が変わる可能性が高くなります。例えば、年収600万円の人の場合、転職後の年収が540万円以下になるようなら、一概には言えませんが、生活水準が下がる可能性があります。このように、ボーダーラインとなる年収を具体的に算出しておくことが大切です。

入社時の年収額だけでなく中長期視点で考える

転職直後の年収のみで転職先を判断しないことも、重要なポイントです。「3年後や5年後といった未来に、現職と転職先ではどちらが理想に近い働き方ができそうか」「年収が一時的に下がったとしても、今後の伸びしろはどの程度ありそうか」といった点を含め、総合的に検討することをおすすめします。

また、現職と転職先では、この先それぞれどんな仕事を経験できるかを考えることも大切です。転職を通じて経験の幅が広がれば、結果として市場価値が向上し、年収アップにつながるかもしれません。

このように、転職直後は一時的に年収が下がったとしても、中長期的には年収アップが実現することはあります。今後の可能性を、転職時点という「入り口」だけで判断しないことをおすすめします。

転職で年収が下がるケースを理解し、最適な意思決定をしよう

ご紹介した年収が下がる5つのケースのように、場合によっては、転職後の年収が現職よりも下がる可能性があります。ただし、年収をどれくらい重視するのかは価値観によるところが大きく、年収が下がるからといって転職すべきでないとはいえません。

転職で一番かなえたい目的は何かを考え、転職軸を明確に据えることにより、年収のみにとらわれない意思決定ができるようになるでしょう。

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浅野 洋二郎(あさの・ようじろう)

dodaキャリアアドバイザー

2007年、立命館大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。約5年間、ITエンジニアの転職支援に従事し、通算1,500人を超えるカウンセリング実績を持つ。その後、建設・不動産・ケミカル・製造業・IT・コンサルなど幅広い業界の企業中途採用支援の営業を担当。より深く企業の経営情報にリーチした中途採用・転職支援を行うため、2019年3月MBA取得。人材業界で約18年、300社を超える中途採用支援経験から数多くの法人顧客とのリレーションを持つ。
転職希望者の方々が求める環境を理解し、その希望にマッチするのはどういった企業であるかということを高い解像度でご提案し、納得度が高い転職活動をしていただけるようサポートすることが、モットーであり、強みだと考えています。