出戻り転職とは?メリット・デメリットや向いている人、注意点を解説
出戻り転職とは、一度退職した会社に再び転職することをいいます。こうしたケースは近年少しずつ増加していますが、デメリットや注意すべき点もあります。
この記事では、出戻り転職のメリット・デメリットや、注意すべき点について解説します。
出戻り転職とは退職した会社に再び転職すること
出戻り転職とは、辞めた会社に再び転職することを指します。一度退職した会社に再び転職するというのは、特殊なケースに思えるかもしれません。しかし実際には、こうしたケースは一定数あります。
2020年にパーソル総合研究所が「企業と離職者とのつながり」について調査した結果を見ると、離職者全体のうち、「同じ企業にもう一度入社したい」と考えている人は8.3%に上りました。実際に出戻り転職をした人の割合は2.13%に下がりますが、意外にも1割近くの離職者が「出戻り転職をしたい」と考えていることが分かります。
離職した企業にもう一度入社したいか
参照:コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査(2020年)|パーソル総合研究所
出戻り転職が増えている背景
現代は働き方やキャリア形成の方法が多様化し、転職は珍しいことではなくなりました。転職の中でも出戻り転職となると少数派ではありますが、ここ数年で増加傾向にあるといわれています。
企業にとって出戻り転職者は即戦力であり、社風や企業文化を理解しています。また採用コストを抑えられることも、歓迎すべきポイントです。
そのため、出戻り転職を受け入れるための出戻り制度やカムバック制度を公式に制度化している企業も多く、その割合は従業員5,000人以上の企業で20.2%にも上ります。こうした企業による制度化などを背景に、出戻り転職者は増えているといえるでしょう。
企業規模と退職者向けの制度の有無
従業員回答 n=2000
参照:コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査(2020年)|パーソル総合研究所
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転職者にとっての出戻り転職のメリット
転職者にとって、出戻り転職にはメリットもデメリットもあります。まずはメリットから見ていきましょう。
社風や企業文化とのミスマッチが起きにくい
企業とのミスマッチが起きにくいというのは、出戻り転職のメリットの一つです。転職者と企業のミスマッチは、双方にとってマイナスにしかなりません。一度は在籍した会社なら、どんな社風・企業文化を持ち、どのような流れや裁量で仕事を進めているかといった、社内の事情を知っています。そのため、新卒採用や一般的な中途採用に比べて、ミスマッチが起こる可能性が低くなるでしょう。
離職の期間にもよりますが、数年以内での出戻り転職であれば職場には旧知のメンバーがいるはずですから、環境にもなじみやすいでしょう。
即戦力として活躍できる
かつて在籍した職場で当時と同じ業務に当たるとなれば、入社してすぐに実務をこなすことができます。即戦力として活躍できることは、転職者にとっても会社にとっても大きなメリットです。
働き方の多様化によりキャリアの選択肢が増え、人材の流動化が活発化している今、どの企業も即戦力人材を採用して組織の強化を図りたいと考えています。
その点、出戻り転職者は会社にとって即戦力になりうる存在です。これまでの経験を活かして、大いに活躍できる可能性があるでしょう。
他社で身につけた経験・スキルを活かせる
一度退職し、別の会社に勤めたのであれば、転職者はそこで身につけた経験やスキルを持っています。それらを出戻り先の会社で活かせることも、出戻り転職のメリットです。他社で経験した業務の進め方、生産性の高め方などを参考に、業務フローなどに対する改善提案もできるでしょう。
転職活動が短期間で済むことがある
一般的な中途採用の場合、まず書類選考から始まり、何度か面接を行ってから内定というプロセスを踏みます。しかし出戻り転職の場合は、社内にいる元上司や元同僚を通じて転職活動を進める場合など、通常とは異なる手順を踏むこともあります。例えば、書類選考は不要で、面接の回数も少なくて済むという具合です。
これは本人のスキルや人柄について、会社側が理解しているからできることです。転職者は転職活動の期間を短縮でき、会社にとっても採用の時間とコストを削減できるので、双方にメリットがあるといえます。
転職者にとっての出戻り転職のデメリット
出戻り転職には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
退職理由となった事柄が再現される可能性がある
その会社を一度辞めたということは、それだけの理由があったはずです。会社の風土や待遇面など、理由は人によってさまざまでしょう。出戻り転職をした場合、過去の退職理由となった問題に、再び直面してしまう可能性があります。
会社の体質や社風、業務の進め方などは、一朝一夕で変わるものではありません。退職した当時とまったく変わらず、そのままの形で残っていることが考えられます。
出戻り転職を決める前に、現在の状況について元同僚に話を聞いてみたり、面接時に確認したりするとよいでしょう。
役職や待遇が下がる可能性がある
古巣に戻ってきたからといって、以前と同じ役職・待遇を与えられるとは限りません。むしろ、役職や待遇が下がったところからスタートすることも十分あり得ます。これは決してペナルティ的なものではなく、会社の人事上の都合が大きく関係しています。
例えば、課長職で退職し、数年後に出戻り転職したとしても、また課長職で迎えられるとは限りません。ポストによっては一般社員から再出発ということもあるでしょう。
待遇面も同様で、前回在籍時と同じ条件、同じ給与を得られる保証はありません。役職や待遇で会社との認識違いが起こらないよう、出戻り転職だからと分かったつもりにならず、事前に就業条件を漏れなく確認することが大切です。
出戻り転職に向いている人
ここでは、出戻り転職はどんな人が成功しやすいのか、あるいは失敗しやすいのか、出戻り転職に向いている人について見ていきましょう。
在籍時に成果を出していた人
在籍時に目立った実績を挙げていた人ならば、出戻り転職がうまくいく可能性は高まります。トップの営業成績を出した、業務改革を成功させたなど、実績のある人は会社側からも歓迎されやすく、スムーズな出戻り転職が期待できるでしょう。
ただし、過去の実績が輝かしいものであるほど、周囲の期待は高まります。その期待に応えるプレッシャーがかかることも認識しておくことが必要です。
在籍時の人間関係が良好だった人
在籍時に社内で良好な人間関係を築いていた人は、出戻り転職に向いているタイプといえます。同僚と連携・協力しながら業務を進めていく場合、本人の業務スキル以上に重要なのが、コミュニケーション能力や信頼関係だからです。
また在籍時だけでなく退職してからも当時の同僚や先輩との関係を良好に保っていれば、社内の情報を得やすく、出戻り転職の際にサポートを頼むといったこともできるでしょう。
出戻り転職に向いていない人
出戻り転職に向いている人がいる一方で、向いていないと考えられる人もいます。具体的に見ていきましょう。
円満退職していない人
人間関係を起因とした退職や何かしらトラブルをきっかけとした退職だった場合、出戻り転職も慎重に検討したほうが良いでしょう。
また特にトラブルがあったわけではなくても、退職したときに何らかのしこりを残しているケースがあります。
例えば突然転職を決め、十分に引き継ぎ業務を行わないまま退職し、同僚たちに迷惑をかけてしまったといったケースでは、出戻り転職を快く受け入れてもらえない可能性があります。
勤務年数が短かった人
前回の在籍時の勤続年数が短い場合も、出戻り転職は厳しくなる可能性があります。出戻り転職を成功させる要素として過去の実績や周囲との信頼関係がありますが、勤続年数が短いと、十分な成果も信頼関係もないままで退職していることが考えられるでしょう。
出戻り転職の注意点
出戻り転職には、注意しておきたいポイントがいくつかあります。元同僚や元上司との交流が続いているなら、これらの項目について事前に相談して、情報を聞き出してみるといいでしょう。あるいは、面接の場で確認を取ることをおすすめします。
体制や業務の進め方が変わっていることもある
人手不足や競争の激化などから、業務の効率化や生産性の向上の課題感がいっそう強まっており、多くの企業が業務体制の整理や業務プロセスの見直しを図っています。
出戻り転職で以前の職場に戻っても、すでに組織構成や業務フローが大きく様変わりしている可能性や、DXによって仕事の仕方がまったく変わってしまったというケースもあるでしょう。効率化されることはむしろ歓迎すべきことですが、入社後、新たなルールに慣れるのに一定の時間がかかることを想定しておく必要があります。
そこまで大きな変化でなくても、部署のルールが変わったり、戻ってみたら過去の部下が自分の上司になっていたりということもあるでしょう。かつて働いていた会社であっても、気持ちをリセットして組織の新人として臨む姿勢が必要です。
出戻りならではの志望動機が必要
出戻り転職であっても、回数が少なくなることはあるものの、採用の際には面接が行われます。そのときに面接官が特に尋ねたいことは、前回の退職の理由と今回の志望動機です。一度退職したことをネガティブに捉えず、中長期的なキャリアを考えた上での今回の志望であることを伝えられるように準備しましょう。
例えば、「転職先で得たスキルを活かしたい」「外に出たことで、この会社で貢献できることに気づいた」など、出戻り先への貢献を期待してもらえるような志望動機を伝えてください。
二度目の退職は切り出しづらい
一度出戻り転職をした場合、やはり合わなかったと感じても、二度目の退職を切り出すのは容易ではありません。出戻り転職を決める前に、自分はなぜその会社を辞めようと思ったのか、理由をあらためて深く考えてみることが大切です。
新しい仕事にチャレンジしたかった、もっと高いステージで大きな仕事を手掛けたかったなどの理由はいずれも前向きで、退職理由としてポジティブなものです。一方でそれとは別に、職場での人間関係のわずらわしさや自分への評価の低さといった、ネガティブな理由はなかったでしょうか。もしある場合、前回と同じように、再び転職したいと考え出す可能性は高くなります。
二度目の退職が容易ではないことを理解し、まずは前回の退職理由をあらためて明確にしましょう。そのうえで、理由となったことが今の自分にとってどれくらいの重要度なのかを問い直すことも重要です。
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出戻り転職を理解し、慎重に検討しよう
出戻り転職は近年、少しずつ増加しています。選択肢の一つとして捉え、メリット・デメリットを理解して、慎重に検討してみましょう。
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