管理職の転職は難しい？実情や成功のポイントを解説

管理職としての転職は一般社員と比較して、求人数が少なく、企業と個人双方のマッチングの難度が上がる傾向にあります。しかし、適切な準備と対策をすれば、管理職としての転職は可能です。正しい情報の収集と事前準備を念入りに行うことが転職成功のカギです。本記事では、管理職での転職を実現させるために知っておきたい転職市場の状況や管理職での転職を果たすメリット、成功のポイントについて解説します。

管理職での転職は難しい？実際のところは？

管理職での転職は難しいと思われがちですが、実際には管理職を中途採用する動きはさまざまな業種で増えており、適切な準備と対策をすれば、管理職としての転職は可能です。 管理職の転職を取り巻く実情についてはこのあと詳しく解説していきますが、上記のような状況があるにもかかわらずなぜ管理職の転職が難しいと思われているのでしょうか。その背景について、まず見ていきましょう。

管理職採用の難易度が高いといわれる理由

管理職に就いている方が、ほかの会社に管理職として転職するのは難しいと思われる方も多いでしょう。その背景には下記のような理由が考えられます。

管理職を求める求人数が相対的に少ない

一般社員よりも、管理職のポストの数は限られています。加えて、管理職の欠員が出た場合、在籍している一般社員を管理職に昇進させる選択肢もあるため、必ずしも社外から採用するわけではありません。そのため、一般社員の求人に比べて、管理職の求人の競争率は高くなる傾向があります。

企業によって管理職に求める役割が違う

同じ役職名であっても、会社や組織によって管理職が担うべき役割は異なります。例えば、複数事業の中でも成熟期にある事業で、安定した運営が求められているA社の営業部長と、単一事業の中で売り上げや組織が急拡大しているB社の営業部長とでは、職務も裁量も違っていて当然です。応募先企業の事業内容やフェーズを把握して、その求人で求められる役割を理解することが大切です。

組織や一般社員との相性が合うか慎重に判断される

最初から管理職として新しい会社に入社する場合、組織内の一般社員との相性が良いのか、良い関係性が築けるかは、転職者・企業双方にとって重要です。管理職とメンバーのミスマッチが起こると、組織全体のパフォーマンスが下がりかねないため、メンバーの採用と比較しても、管理職の採用にはより慎重になるでしょう。

知っておきたい管理職の転職の実情

転職市場全体で見ると、管理職の転職は幅広い業種で増加傾向にあります。年功序列の傾向が弱まり、年齢関係なく実力次第では、若くして管理職になれるケースが増えてきていることがその一因です。そのため、経験豊富なミドル層の管理職はもちろんのこと、20代後半や30代であっても実績やスキル次第では管理職として転職することが可能といえるでしょう。

また、テクノロジーの進歩によるITサービスの発展・多様化を背景に、異業種の企業に管理職として転職する流れも増えています。例えば、金融企業がFinTech事業に力を入れたり、非金融ビジネスに参入したりといったケースが挙げられます。その場合、IT業界や新規参入する業界出身の人材を管理職やスペシャリストとして採用するケースは少なくありません。このような背景からも管理職経験者の転職のチャンスは広がっているといえます。 以降からは年代別の傾向を見ていきましょう。

【年代別】管理職の転職に求められるもの

20代の場合

20代の管理職の転職では、ビジネスの課題を主体的に捉え、解決に向けて周囲を巻き込みながら取り組める力が求められます。役職の種類や在任期間よりも、管理職としての本質的な能力や資質が問われやすいのが実情です。

30代の場合

30代の管理職が転職活動する際、企業が重視するのは、管理職としてこれまでどのように事業に関わり、推進したかです。管理職として取り組んだ事業のフェーズや課題、どのようにチームを牽引して成果につなげたかが面接などで問われます。

40代の場合

40代の管理職の場合は、部署の垣根を越えた横断的な働きかけの経験や、課題解決能力などが問われます。自組織の成長や課題解決はもちろんですが、事業全体や会社全体への貢献度や影響度についても重要視されることを念頭に置いておきましょう。

50代の場合

50代の管理職は、役職定年を前に、一定の年収を維持しつつ、自分がやりたいことができる環境に移りたいといった理由から転職活動を始めるケースが少なくありません。 50代の転職では、最も活かせる強みや、価値提供できる事柄を明確にしておくことが重要です。その上で、「際立ったスキル・経験」と「企業が求めるニーズ」が合致するかが、転職成功のポイントとなります。

管理職での転職のメリット

管理職に就いている人が、管理職へ転職する際のメリットは下記のとおりです。転職を検討する際に、参考にしてください。

年収が上がる可能性がある

会社によって管理職の待遇は異なりますが、自分のスキルや経験と企業や求人とのマッチ度が高い場合、好待遇となる可能性が高まります。転職先でキャリアを積み実績を上げることで、さらなる好待遇や新たな経験・機会も見込めるでしょう。現職の業界や事業に行き詰まりや頭打ちを感じている場合は、成長している業界や企業に管理職として転職することで、先行き不安の解消につながるというメリットもあります。 ヘッドハンティングサービスに登録しておくと、自分のスキルや経験を高く評価してくれるヘッドハンターからスカウトが届くため、年収アップの可能性があります。

企業や組織への裁量が広がる可能性がある

入社直後から会社や組織の戦略方針や重要課題に対しての裁量を持って仕事を進めることができます。自分の興味のある業界や転職先の企業だからこそできる仕事に挑戦することで、主体的にキャリアの幅を広げることができます。

自身の影響力を高められる可能性がある

管理職のポジションで転職すると、早期から周囲のメンバーへ影響を与えてリーダーシップを発揮することができます。組織全体の目標や方向性に貢献し、ビジネス戦略の策定に関わることで、組織により大きな影響を与えることができます。

管理職での転職のデメリット

管理職に就いている人が、管理職で転職する際にはデメリットも生じます。転職活動をする前に知っておきたい、管理職での転職のデメリットは下記のとおりです。

転職後にストレスやプレッシャーを感じる場合がある

転職した直後、新しい環境でストレスを感じることは想像に難くありません。一から人間関係を築き、成果を出すことは簡単なものではないからです。また、転職者に対する企業側からの期待の大きさや課せられる高い目標からプレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。

転職前に期待していたミッションとは異なる仕事を任される場合がある

「管理職」と一口に言っても求められる役割や実務内容は会社や組織によってさまざま。入社後に事前に想定していた役割や業務内容とのギャップが生じてしまうこともあるため、選考時にお互いの認識のすり合わせや食い違いの解消が重要です。

チームメンバーとの信頼関係構築に苦労することも

管理職として転職する場合、相互理解がないままメンバーのマネジメント業務を開始することになります。 信頼関係を構築するには一定の時間がかかることを認識しておきましょう。組織の体質自体が合わない、というミスマッチに転職後気づき苦労することのないように、転職活動の段階で、組織運営をする上で知っておきたいことや懸念点については確認し、納得感を持って入社することが大切です。

管理職でハイクラス転職を成功させる6つのポイント

転職活動は、事前準備が重要です。特に、管理職に就いている方が管理職でのハイクラス転職を成功させるためのポイントを、6つご紹介します。

転職タイミングを見極めるために、定期的に求人に触れておく

転職のタイミングは自分の年齢や家庭の事情、組織・事業フェーズなどさまざまな要因から考えますが、自分のタイミングだけでなく、企業側のタイミングも見逃さないようにしましょう。管理職クラスの求人はもともとの枠数も少ないため、同様の求人が再度出ることはしばらくないケースも数多く存在します。一期一会のチャンスを逃さないよう、転職することが決まっていないタイミングでも定期的に求人に触れておくのがおすすめです。

転職を成功させる要素はさまざまありますが、縁とタイミングも重要な要素のひとつです。応募したものの採用を見送られたとしても、原因のすべてが転職希望者にあるとは限りません。チャンスを逃さないためにも不採用通知を恐れず、応募という「打席」に立つ回数を増やしていくことが重要です。

求人票の情報だけで、応募する・しないを判断しない

求人票に記載されている情報のみで、応募する・しないを判断しないことも大切です。例えば、新規事業を立ち上げるために設けられたポジションの場合などは秘匿性が高く、求人票に具体的な情報が記載されていないケースも少なくありません。業務内容や企業そのものに興味があれば、まずは応募してみるスタンスで臨みましょう。

数十社の企業に応募したとしても、決して応募数が多すぎることはありません。そのうちの数社が面接選考へと進むことを考えれば、むしろ適切な応募数といえます。

また、企業側の求める人物像が、選考過程で変化することもあります。例えば、当初の求人要件には合致しないものの、魅力的なスキルや経験を備えていることが伝わり、応募者に合ったポジションを新設してもらえる場合などです。そのため、感覚的に求人票の内容に合いそう・合わなそうという理由だけで応募をあきらめるのではなく、興味がある企業ならまずは応募してみることをおすすめします。

転職先の条件を明確化する

企業によって管理職に求める役割や裁量はさまざまです。力を発揮することができ、キャリアアップや自己実現がかなう、自分に合った企業を見つけるためにも、自分が求める条件を明確にしておきましょう。 譲れないこと、妥協できることをリストアップし、優先順位をつけて整理しておくと、軸がぶれません。そうした自分の希望を整理しておくことで、自己アピールの方向性もはっきりするため、転職活動をスムーズに進められます。

業界にとらわれずに転職先を検討する

管理職の経歴を活かすには、同じ業界内での転職が有利と思われがちですが、異業界での転職も視野に入れると、一気にキャリアの可能性は広がります。 業界をまたいで転職することで、自分が持つ専門知識やスキルがこれまでとは違う分野に活かせたり、新規事業に即戦力で貢献できたりする可能性が広がります。例えば、IT企業でさまざまなIT導入を経験している人材が、レガシーな業界へ転職し、今までの経験を活かしながらテクノロジー×レガシーな商材の掛け合わせで新たな価値を見いだしていく組織のリーダーを務めるケースなどが挙げられます。

企業の事業フェーズを意識する

応募先企業の事業フェーズを意識するのも重要なポイントです。成長期・安定期・衰退期では、企業の人材ニーズもおのずと変化します。どのようなフェーズであれば自分の価値を発揮できるかは、常に意識しておくことが大切です。

管理職ならではの選考対策をしておく

管理職の採用では、面接でのアプローチが重要となります。企業によって管理職の担う職務や裁量が異なるため、企業側が求めるスキル・経験はもちろん、管理職に就いている方が持つスキル・経験もさまざま。自分にマッチした企業への転職をかなえるためには、求人の背景を知ること、企業の求める人材像を正確に把握すること、それを踏まえつつ自分のスキル・経験・人柄を正しく伝えることが不可欠です。ポイントに分けて下記でご紹介します。

応募先が求める人材像を研究する

まずは応募する企業のビジネスモデルや風土、求める人材像を研究することから始めましょう。また、なぜ管理職で求人を出しているのか、その背景を知ることも重要です。そうすることで、自分に合っている企業か否かの総合的な判断もしやすくなります。

自身のキャリアの棚卸しをする

次に行うのが、自分のキャリアの棚卸しです。強みとなる経験、スキル、資質を見極め、それを活かしてどのようなポジションを担いたいのか、どのようにキャリアアップしていきたいのかを明確化します。そもそも、「管理職」という職種は存在しません。管理職と一口に言っても、会社によって役割の定義や範囲が大きく異なります。3～4人のチームを率いていたのか、200人の部下がいたのかではマネジメント手法やスキルの出しどころが違ってきます。重要なのは、管理職という役職を背負い、具体的に何を行い、どのような成果を上げてきたのかを整理することです。また、転職後も管理職としてのキャリアを歩んでいきたいのか、その場合、どのような役割を担う管理職が向いているのかなどをイメージしておくことをおすすめします。これからどうしていきたいのかをじっくりと考え、転職の軸を定めておくことも大切です。

面接は定量・定性の両側面を意識

面接においては、管理職としての実績を定量・定性の両面で、いかに分かりやすく具体的に伝えられるかが肝となります。プロセスと成果をもって、企業や組織にどのようなインパクトを与えられるかを示してください。逆質問に対しては、意欲や強み、企業のビジョンへの共感、業務への関心の高さが伝えられるよう準備しておくことをおすすめします。

経営層との対話で意見を言えるよう準備する

面接時に、経営層や役員と企業課題や今後の事業方針などについて対話が行われることも。会社のビジョンや経営戦略に対して、意見ができるようにしっかりと準備をしておく必要があります。「組織のビジョンや戦略について理解しているか」「会社や組織の目標達成に向けて貢献する意識を持っているか」「熱意を持っているか」といった点で、見られることが多いでしょう。

応募先の下調べをしておくことは大前提です。その上で、経営理念や経営方針、事業内容、IR情報はもちろん、応募するポジションやその役割を把握しておき、より具体化した対話ができるように準備してください。

応募先の企業で自分のスキルや経験をどのように活かし、組織に貢献できるかを語れるかどうかも重要です。目標達成や課題解決を自分ごとに落とし込んで語れるよう、価値観やビジョンを具体化しておくことをおすすめします。

企業が管理職に求めるスキルと経験

企業側は、管理職の転職希望者にどのようなスキルを求めているのでしょうか。ここでは、企業側が管理職に求める具体的なスキルと経験について解説します。

会社の課題を解決する推進力

企業側は管理職の転職希望者に対し、企業の課題を正しく捉え、周囲を巻き込みながら解決に向けて動ける力を求めます。コミュニケーションスキルが高いだけでは通用しにくい点に注意が必要です。

具体的な課題を見いだし、解決に向けた施策を実行していく推進力の有無が、重要なポイントになるといえるでしょう。

変化への適応力

変化への適応力も、管理職に求められるスキルです。時代が変化する中、企業も事業変革を迫られています。組織変革や事業の再編、新規事業参入といった動きが活発化しているのは、こうした動きがあるからです。

このような状況下で、多くの企業は自社にないスキルや経験を備えた人材を採用したいと考えています。事業が大きく変わる変革期を乗り越えた経験や、そのような状況に適応できる力があるかどうかが問われます。

会社全体を俯瞰し、組織を横断して巻き込める力

会社全体を俯瞰し、複数の部署や部門を横断して巻き込める力があるかどうかも、管理職に求められるスキルです。部下の業務の管理経験は、アピールの仕方にもよりますが、それほど重要視されない場合があります。なぜなら、業務の管理は管理職としての大前提であり、特筆すべきアピールポイントではないからです。

企業としては、自社にはない業務の経験がある、自社の弱点を補完してくれるといった点のほか、他部署と折衝して事業を推進できる力がある人材を採用したいと考えているケースが多く見られます。

管理職で転職を成功させた人の共通点

前述した企業が求めるスキルや経験を踏まえて、管理職として転職を成功させている人の共通点を見ていきましょう。転職希望者と日々面談を実施している転職のプロから見た共通点は、主に下記の3つです。

経営者目線を持っている

管理職で転職を成功させた人は、経営者目線を持っている点が共通しています。組織や事業全体を見渡せることに加え、具体的な改善点の提起、改善に向けた施策の実行を担える点などが共通しています。

一般社員と比べて、経営層に近いポジションで働く管理職として転職したい場合には、こうした経営者目線を持っていることが大切です。

広く情報収集している

情報収集能力に長け、常に幅広く情報を得ていることも、管理職の転職を成功させる方の共通点です。時代の流れを読み、新しい発想を持って業務に取り組めることは、管理職に不可欠の能力といえます。変化の激しい時代だからこそ、業種を問わず求められる資質といえるでしょう。

説明力が高い

管理職での転職を成功させる人は、豊富な知識と経験を有するだけでなく、それらを活用して積極的に行動し、やるべきこと・やりたいことを実現させるために、周囲をその気にさせる説明力に長けています。他部署との連携や取引先と新たな取り組みを実施したい場合など、協力的でないステークホルダーに対しても、言葉を尽くせる人や、複雑な課題を分かりやすく第三者に伝えられるスキルを有している人は転職活動の面接の場でも魅力的に映るでしょう。

管理職の転職に関するQ＆A

続いては、管理職の転職に関するよくある質問と回答をご紹介します。疑問点や不明点の解消にお役立てください。

管理職経験があると転職は有利？

管理職の経験が転職で有利になるかどうかは、業界や職種によって異なります。ただし、組織やプロジェクトを推進する存在として成果を上げた経験があり、事業課題を解決する力、変化への適応力といったスキルを備えている方なら、管理職の経験が有利に働く可能性があります。役職に就いていたという事実そのものではなく、実際に何をしてきたか、転職先で何ができるかがポイントです。

管理職経験がなくても管理職として転職できる？

管理職経験のない方でも、管理職として転職できるケースはあります。ただし、企業が必要としているスキルや経験があるかどうかがポイントとなります。企業規模やポジションにもよりますが、例えば、管理職の経験はなくてもプロジェクトマネジメントの経験がある場合や、プレイングマネージャーのような存在として、役職者ではなかったものの、一部そのような役割を担っていた場合であれば、転職先で管理職と同等のポジションを任されるケースも考えられます。

年齢が高くても管理職として転職できる？

年齢が高い方でも、管理職として転職は可能です。転職市場では、管理職や経験豊富なミドル層を求める企業が増えています。就職氷河期に人材を獲得できていなかった企業では、マネジメントができる40代以上の人材が不足しているといったケースが少なくありません。

組織やチームを自身が主体となって推進した経験があり、課題解決に向けて部門横断的に取り組める40代以上を採用したいという企業は多く見られます。

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管理職の転職は難しいと思われがちですが、管理職の採用ニーズはさまざまな業種で高まっており、管理職として転職することは十分に可能です。

管理職の転職では、会社や事業の課題をどのように捉え、解決に向けてどのように取り組んだかが問われます。採用企業側の人材ニーズや事業フェーズを入念に調査し、自身のスキルや経験とのマッチ度を正しく見極めることが大切です。

転職活動の際は、より多くの選択肢を持つためにも、優秀なヘッドハンターが多く在籍しているハイクラス向けの転職サービスを活用するのがおすすめです。

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