マネジメントに向いている人とは?人事コンサルタントに聞く、必要なスキルとその身につけ方

マネジメント能力は、チームや組織を率いる立場にある管理職や経営層にとって欠くことのできないスキルです。しかし、具体的にマネジメント能力とはどのようなものを指すのかイメージしづらいという人も多いかもしれません。

この記事では、人事コンサルタントとして、200社以上の人事制度の設計・運用支援を率いてきた平康慶浩さんにお話を伺い、マネジメントに求められる能力やマネジメントに向いている人の特徴、成果を出すための方法などについて解説します。

マネジメントとは?

ビジネスにおけるマネジメントとは、組織の目標を達成するために行う「組織運営」や「経営管理」を指します。経営資源である人的資源・物的資源や情報などを効率的に運用し、リスク管理も徹底して、組織として成果を上げることがその目的です。

マネジメントの対象は、組織の階層によっても異なりますが、管理職は部署やチームにおける経営資源を、経営者は企業全体の経営資源を管理していることが多いでしょう。組織を円滑に機能させ、そのパフォーマンスを最大化させる役割です。

マネジメントに求められる能力

それでは、マネジメントには具体的にどのような能力が求められるのでしょうか。これを知ることは、組織の中でうまく人やチームを動かし、社内で活躍できる人材になるためのヒントにもなるはずです。

自分の軸を変えずに、意見を伝える力

マネジメント業務においては、ここだけは譲れないというポイントや目標を持ち、自分の行動や考えに一本の軸を通しておくことが大切です。

マネジメントは、組織やチームの舵取りを担う立場です。すぐに意見が変わってしまう、周囲に影響されて行動に一貫性を欠いてしまう振る舞いなどによって、周りからの信頼を失ってしまうことにもなりかねません。

自分の意見に必要以上に固執したり、一方的に押し付けたりするのではなく、相手の立場や考えに寄り添った上で、それでも「譲れない」と感じるポイントはしっかりと伝える毅然とした姿勢もマネジメントには求められます。

相手の意図を正確に汲み取る力

自分の意見を伝えるだけでなく、メンバー一人ひとりの話に耳を傾け、相手の意見や意思を汲み取る力も必要です。

ここで大切なのは、相手を否定したり、他の人と比べて優劣をつけたりするのではなく、その人が持つ固有性や強みを見つけ出して肯定し、尊重する姿勢です。マネジメントにおいては、メンバーが組織内で最大限の力を発揮できるよう、目標設定や仕事の割り振りを考える必要があります。メンバーが自分の強みを活かして活躍できる場を整えることができれば、チームワークや組織力も高まっていくでしょう。そのためにはまず、相手の話をよく聞き、相手をよく知ろうとする姿勢が大切です

また、ここで指す「相手」は自分の部署のメンバーだけでなく、「上司」や「他部署の社員」、「社外のパートナー」のことも含まれます。仕事で相対する人が重視していることや、意思決定の背景を理解することが自分の仕事でのスムーズな課題解決にも繋がります。

会社のビジョンやパーパスについて理解し、その魅力を伝えられる力

会社が掲げる経営理念を深く理解し、共感の意を示すことも、マネジメントを行う上で欠かせない条件といえるでしょう。

組織やメンバーが同じ方向を向くためには、メンバーにその意義を伝え、会社のビジョンやパーパスによって実現される未来に希望を感じてもらうことが大切です。自らの言葉で率先して語り言語化する姿勢、仕事に誠実に向き合う姿勢でそれを示し、メンバーのエンゲージメントを高めていく力もマネジメントには求められるといえるでしょう。

周りを巻き込み、社内外にさまざまなつながりをつくる力

周りを巻き込み、社内外にさまざまなネットワークを築く力もマネジメントには求められます。そこで重要になるのは、メンバーをはじめ社内外の人から「あの人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるかどうかです。

楽しみながら仕事にコミットしている姿やメンバーが生き生きと活躍しているチームは、周りの目に魅力的に映るはずです。「この人やこのチームと関わりたい」という人が増えれば、優秀な人材が集まり、チーム力の強化につながります。さらにその評判が広がれば、社外にも独自のつながりが増えていくでしょう。

マネジメントに向いている人の特徴

ここで改めてマネジメントの役割を整理すると、「組織としての事業成長」と「個人の人材育成」の大きく2つに分けられ、それを両輪でまわしていくことが求められます。

よく陥りがちなのが「高いプレッシャーを与えて業績は上がったが、体調不良のメンバーが増えてしまった」「人材育成によって個人のスキルは上がったが、チームの目的や足並みがそろわず組織としての成果に結びついていない」など、どちらか片方だけが達成され、片方がうまくいっていないケースです。

健全な組織を作るには、いかにこの2つを両立させ、個人の成長を組織の成長へと結びつけられるかどうかが重要です。

これを踏まえた上で、マネジメントに向いている人にはどのような特徴があるのかについて解説します。

高い視座をもって仕事に向かっている

マネジメントには、意識的に視座を高めて仕事に臨む姿勢が不可欠です。会社組織は、「プレイヤー」「マネージャー」「経営層」という階層構造になっており、それぞれに求められる役割は異なります。

プレイヤーからマネージャーへのステップアップを目指すなら、自分の担当業務をこなすだけでなく、そこから一つ視座を上げて、組織やチームの管理という視点で自らの仕事を捉え直す必要があります。

そのための一歩として、「自分の上司がより経営層に近いマネージャー、もしくは役員からどのような役割を求められているのか」「自分の上司はどのような視点で仕事と向き合っているのか」を俯瞰し、自らの仕事へと落とし込める人は、マネジメントの適性が備わっているといえるでしょう。

周囲の人の強みを理解していて、適性に合わせた仕事を任せられる

マネージャーには、ンバーが持つ力をうまく引き出し、組織やチームとして成果を上げる仕組み作りが求められます。

そのためには、メンバーそれぞれが持つ強みや個性を理解し、その適性に合わせた仕事を任せられるかどうかが重要です。同時に、メンバーの現時点での知識やスキル、置かれた状況などを踏まえ、その人に足りないものは何か、それを補うにはどのような指導や教育が必要なのかを考え、目標達成に向けて成長をサポートする姿勢も大切でしょう。

このように、自分中心に考えるのではなく、部下や後輩を「主人公」として引き立て、活躍させる采配ができる人もマネジメントに向いているといえます。

周囲の人と信頼関係、協力関係を築くことができる

持続的に成果を上げられる組織に共通するのは、組織やチームを構成するメンバー間に信頼関係や協力関係が築けていることです。

部下や同僚、上司など、立場を問わずにコミュニケーションをはかり、信頼関係を結ぶことで、相互に協力し合う体制を作れる人はマネジメントの適性があるといえるでしょう。

さらに、他部署の社員や経営層、社外の人とも意識的にネットワークが築けると、新しい仕事のチャンスが広がり、組織やチームとしての業績の達成にもつながりやすくなります。

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マネジメントに向いていない人の特徴

反対に、マネジメントに向いていない人にはどのような特徴があるのか見ていきましょう。

目の前の仕事にしか注意が向いていない

先述した通り、プレイヤーとマネージャー、経営層によって求められる役割は異なります。プレイヤーとして活躍している人がマネージャーを目指す場合、ただ目の前にある仕事をこなすだけでは不十分といえます。

課長や部長クラスへの昇進基準は、プレイヤーとして優れているかだけではなく、その役職に合った役割を担えるかどうかです。そもそも、人材育成や組織運営に興味が持てず、「苦手」「面倒」だと感じてしまう人はもちろん適性が足りていないですが、目先にある自分の仕事にばかり捉われて、広い視野が持てない人や、周囲の状況に目を配れない人は、マネージャーに向いているとはいえないでしょう。

仕事を部下に任せられない

人に物事を頼むのが苦手だと感じる人、もしくは成果を自分だけのものにしたいと感じる人は、仕事をひとりで抱えこみがちな傾向があります。

マネジメントに求められるのは、人を育てて動かす力であり、チームや組織が果たすべき成果を明確にし、その達成に向けて各人の強みや目標に合った業務を割り振ることができるかが重要です。どんな仕事も自分一人で完結させていては、プレイヤーとしてのスタンスが抜けない、と判断されるかもしれません。

周囲の人と信頼・協力関係を築けない

プレーヤーとしてスキルが高く、高度な専門性を持っていたとしても、協調性や共感力に欠けている人、周囲の人とうまく信頼関係や協力関係を築けない人はマネジメントにはあまり向いていないでしょう。

「評価されたい」「認められたい」という気持ちが強く、部下や後輩の成長を素直に喜べない人や、組織の利益ではなく自分の評価ばかりを気にしてしまう人は、意識を変える必要があるかもしれません。

マネジメント能力を向上させる方法

ここからは、これからマネジメント業務を目指す人や、マネージャーになりたての人がマネジメント能力を伸ばすための方法をご紹介します。

会社の人事評価制度を正しく理解する

会社がマネジメント層にどのような役割を求めているのかを知るには、人事評価制度を理解するのが一番の近道です。

会社における人事評価制度は、ゲームやスポーツにおけるルールにあたり、そのフィールドにおいてどのような動きが期待されているのかが示されています。まずは、会社で定められている「行動評価基準」や「人事評価基準」などに目を通して、マネージャーに求められる役割を今の仕事に紐づけ、どうしたら具体的な行動や成果として示せるかを考えてみましょう。

ポータブルスキルを身につける

マネジメント能力を伸ばすには、ポータブルスキルを身につけることを意識するとよいでしょう。ポータブルスキルは、論理的思考力や課題分析力・解決力、計画立案推進力、コミュニケーション能力など、どの企業においても求められる汎用的なスキルを指します。

その中でも、仕事をする上での基本となる聞く力・話す力をはじめとする「オーラルコミュニケーションスキル」や、文章を通じて相手の意図を理解し、指示や意見をテキストで伝える「リテラルコミュニケーションスキル」においてはマネージャーになると、より一層高度なレベルを求められます。

ポータブルスキルに自信がないという人は、経営大学院の単価コースや定額制セミナー、オンライン教育などを利用し、一度、集中的に学ぶ機会を作るのもよいでしょう。

自分の経験やスキルを周囲に知ってもらう機会を増やす

マネジメント層を目指す場合、新しいプロジェクトや仕事が始まるときに、上司や周囲の人から「あの人ならできそうだ」と想起され、声をかけてもらえるかが重要です。

新しいプロジェクトが始まるタイミングで成果を出せると、「あの人なら必ず期待に応えてくれる」という信頼感が生まれ、新たな機会や選択肢が広がります。そのためには、自分の人柄や経験、スキルなどについて、普段から周囲に知っておいてもらうことが大切です。

直接の上司だけでなく、さらに上位のマネジメント層やチーム外の同僚や先輩など、さらには社外の人ともコミュニケーションの機会を積極的に作り、関係性を広げることを意識しましょう。

マネジメントで成果を出すには?

続いて、これまでマネジメント業務である程度経験を積んできた人が、さらにスキルアップするためのポイントについても紹介します。

自分よりも上位ポジションの視座を意識する

現在、課長のポジションにいる人であれば、部長や役員などの上位層がどのような役割を持ち、どのような視点で仕事をしているのかを意識しましょう。

役職が上がるほど掌握できる範囲は広がります。例えば、経営層に求められる役割は、会社の将来を見据えた人的資源・物的資源の判断、管理をする能力であり、その意思決定が及ぼす影響や裁量はしだいに大きくなります。

その権限を持つにふさわしい人物になるには、会社のビジョンやパーパスを自分の行動に落とし込み、さらにそれを自分の言葉で語り、周囲の社員にまで波及できる力が求められるでしょう。いかに上位層の代弁者になれるかがマネジメント層として認められるために重要なポイントです。

自分が動くのではなく、他人に仕事を任せる

プレーヤーとして優秀だった人の中には、自分で仕事を進めるほうが早いからと考え、他の人に仕事を任せられない人も多いかもしれません。

しかし、マネージャーに求められるのは、自分で成果を上げることではなく、組織のメンバーが成果を上げられるような環境や仕組みを整えることです。自分が得意な仕事は積極的に手放し、メンバーに任せることを意識しましょう。仕事を任せたらコミュニケーションの機会を定期的に設けて、進捗を確認・フォローすることも大切です。

ただし、過度な干渉はマイクロマネジメントになりかねないため、成果として期待していることを共有した上で、メンバーを信頼し、ある程度の裁量を持たせて仕事を任せられるとよいでしょう。

業界や時流など大局の変化を見極めて行動に移す

マネージャーとして組織やチームを成長させるには、業界や時代の流れを見極めて、適切な意思決定を行わなければなりません。より広い視野で業界全体を見渡し、常に変化する社会環境や最新のトレンドなども踏まえた上で、「今、求められているものは何か」を考える必要があります。

自分の考えや意見を言うだけであれば簡単ですが、それを実行に移して成果につなげられる人は決して多くありません。柔軟に意思決定を行い、創造的な価値を生み出せる人は、ワンランク上のマネージャーを目指せるでしょう。

「マネジメント職」への近道は、求められている役割を正確に把握すること

マネジメントの大きな役割は、メンバーなどの個人の成長をサポートし、個人の成長が組織の成長へとつなげていく点にあります。管理職や経営層など、立場によっても求められる役割は変わるため、自分の現在のポジションと次に求められるポジションの役割を意識して、日ごろの仕事に向き合っていくことが重要です。

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平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)

アクセンチュア、日本総合研究所を経てセレクションアンドバリエーション株式会社代表取締役 マネージングディレクター。人事・組織分野のコンサルタントとして、人事評価制度設計、教育研修体系設計、組織業績評価基準などを現在も数多く手がけている。従業員数千人規模のグローバル大企業から中堅中小企業まで、業種を問わず幅広い制度設計と運用支援を行っている、人事のプロフェッショナル。