役員の転職は難しい? その理由をヘッドハンターが転職のポイントふまえ徹底解説

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終身雇用という概念が崩れつつある現代社会において、ハイクラス人材、特に役員層においても転職は珍しくないようです。激しく変化する時代の中で、外部から役員を招き入れ、企業変革に対応しようとする企業も多くあります。

しかし、一般社員層と違い、役員クラスの転職事情はなかなか表には出てきません。今回は、役員の転職について昨今の動向や、求められる実績や役割などを解説していきます。

INDEX(読了時間9分)

転職における役員の求人動向について

役員といえば、企業運営の中枢です。役員というポジションから転職しようとする人材側の理由、求人を行う企業側の理由を確認していきましょう。

役員の主な転職理由(求人が出る背景)

同じ役員という立場でも転職の理由は人それぞれです。主なものとしては、キャリアアップや、専門性を高めたいなどが挙げられます。現職では、「今より上位職を目指せない」「自分のやりたい仕事ができない」という判断から転職に踏み切る人も少なくありません。

また、役員の立ち位置から、経営者との方向性の相違(ズレ)が大きくなってきたことに悩み、転職を決断するケースもあります。

企業側が役員として人材を求める背景

企業側が新たな役員を求めるタイミングとしては、以下のような場合があります。

  • 日系企業
    企業再編が必要となるようなケースでは、新たな働き方への対応やDXなどの課題への迅速な対処ができる執行役が必要です。中小規模の企業では、後継者問題の解決として求人を行うケースも見られます。
  • 外資系企業
    役員人材が辞職した場合には、そのポジションにふさわしい新たな人材雇用が求められます。また、本国の方針変更などにより、運営の変革を求められ、スピーディーに意思決定のできる人材を登用するケースもあります。
  • スタートアップやベンチャー企業
    資金調達後、いままで配置していなかったポジションに対して、ガバナンス的に人材配置が必要となるケースがあります。

役員クラスの場合、役員が辞める情報自体が表に出ることはあまりなく、その後の求人に関しても上層のごく一部にしか知らされません。スタートアップやベンチャー企業で新たなポジションを設置する場合には、前向きな要素として公表されることもありますが、そういった例はごくわずかです。

そのため、一般的に役員の求人のタイミングを外部から知る機会はありません。

転職で役員を目指す場合の注意点(転職の難しさや失敗しやすいポイント)

転職で役員を目指す場合には、一般的な転職とは異なる難しさがあるのが特徴です。役員の求人は、企業戦略に関わるため、極秘裏に進められます。また、多くの場合は、変革が求められる局面にあり、社内では育ちにくい執行力を期待されています。

内部からの反発が予測される中で、わざわざ外部からの人材を登用することに対しては、十分に覚悟を持って臨むことが必要です。「違うものを運んでくれる」「確実な結果をもたらす」といった人材として貢献しなければならないからです。

早期に求められている結果が出せない場合は、実力不足で苦しむこともあり得ます。また、望まれて入社した場合であっても、社長や社内メンバーとの相性や複雑な人間関係に悩むことも少なくありません。

特に、今までの経験や実績が十分あり、ビジネスの基礎体力に自信があるようなケースは注意が必要です。つい今までの経験則でものごとを考えてしまいがちですが、転職で企業内のルールが異なれば、動き方も変わるのです。

例えば、COOといった執行役の場合でも、CFOやCTOなど他の役員との関係性に注意し、専門的な分野については他の役員の意見に耳を傾ける姿勢が大切です。日系企業は、責任領域について比較的曖昧な傾向にあります。

一方の外資系企業は、仕事のカバー領域は明確に区切られており、責任のある範囲については数字にシビアです。どの企業で役員を目指すのかによって、役員としての仕事内容が変わるため、企業規模や資本などによる違いを十分に理解しておく必要があります。

 役員を目指すメリット(仕事のやりがい)

企業の役員はステータスの高い仕事です。そもそも役員になることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、役員になる現実的なメリットと、法律上の役員とはどこまでを指すのかについて確認しておきましょう。

役員になることのメリットは?

役員になる最も大きなメリットは、経営に直接携わるということです。任された分野については、自分の裁量で最終決定ができます。
もちろん、大きな責任は伴いますが、それ以上のやりがいを感じられるでしょう。たとえ、勤める企業の規模を小さくしても、腕を試してみる価値はあります。

役員報酬の面では給与が上がる可能性もありますが、役員の年収相場は企業によってバラバラなため一概にはいえません。なかには「年収数千万円」というケースもあります。一方、スタートアップやベンチャー企業の場合は「ベース+ストックオプション」という形が多い傾向です。

そのため、転職先の企業の規模によっては、年収が下がることがあるという点に注意しなければなりません。しかし、役員になることは、将来的なステップアップにも役立ちます。
経営者の側近として、経営に関する貴重な経験や実績を積むことが可能です。役員経験により、今後のキャリアが変わることが期待できるでしょう。

例えば、いずれCEOを目指すのであれば、COOを経験しておく必要があります。また、事業の執行役として十分な実績を上げ、経営ノウハウを学んだ後、自身で起業というケースも少なくありません。

法律上(会社法)における「役員」とは(定義)

日本の会社法における株式会社の役員は、「取締役/代表取締役」「会計参与」「監査役」の3つです。その業務と一般的に役員に含められるものは以下の通りです。

役職 内容
取締役/代表取締役 業務執行に関する意思決定を行う。取締役会を設定している場合には、代表取締役がその任にあたる
会計参与(税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人) 取締役と共同し、計算書類の作成、保管、開示などの会計業務に参与する
監査役 株主総会で選任される会社法上の役員。取締役の職務についての不正調査、取締役会や株主総会での報告を行う
執行役 企業が任意に設置している役職で業務執行を担当する役員を指す。法的な根拠はない
執行役員 企業によっては役員に含めている場合もあるが、法的には役員ではない

役員に求められる実績や役割

役員として転職する人材には、以下のような実績や役割が求められていると考えられます。

実績

  • 日系企業
    日系企業の場合、基本的に役員経験者にしか声がかからないのが一般的です。「変革が迫られている」「新規事業の立ち上げ」といったタイミングであれば、その分野のプロとしての実績が求められます。まれにスタートアップやベンチャーなどでは、以下のようなケースで現在役員でなくても登用されることもあります。・業界内で一目置かれている
    ・大企業の一事業部で目覚ましい活躍をしている

    ただし、企業規模が転職前よりも落ちてしまう可能性があることは、理解しておく必要があります。いずれにしても、秀でた実力があり、執行役としての力があることが前提となるでしょう。

  • 外資系企業
    語学力と海外のビジネス事情に通じていることが前提となります。役員経験者でない場合でも、その業界での実績が認知されていれば声がかかる可能性もあるでしょう。
    また、本国との調整役として、国内事情を的確に説明できる高いコミュニケーション力も求められます。

マネジメントスキル

役員にとってマネジメントスキルは、必須能力です。企業の置かれている現状を経営の視点から客観視しながら、管理職や社員の立場を理解しつつ、企業経営にとって最善な方向へと導く必要があります。ただし、組織が大きくなるほど部門間の調整は難しくなる傾向です。

役員として、それらの関係性を構築する役割も担っています。各所から理解を求めるうえでは、マネジメントが単なる「管理」ではなく、「目標に向けた取り組み」といったことを認識しましょう。役員という立場とマネジメントの関係性を十分に理解し、トップマネジメントを実施できる能力が求められます。

経営者視点

役員は経営者の立ち位置で企業運営に参画することが必要です。自身に与えられた職務を遂行する際にも、常に経営者としての大きな視点の共有が求められます。マーケティングのエキスパートやDXの推進役として迎えられた場合でも、企業経営という高みから俯瞰した観点が必要です。

語学力(外資系企業、グローバル企業)

近年は、日系企業の中でも役員クラスでは語学が堪能な人が多い傾向です。小規模な企業でも、地方から海外市場への展開を図る例もあります。直接交渉をする機会がなくても、情報収集や交流といった場面で語学力があることは有利です。

特に、本国とやり取りが多くなる外資系では、ビジネスシーンに耐えうる一定水準以上の語学力が必須となります。

企業や社風に合うか(人間性)

先述したように、わざわざ外部から経営中枢に人材を登用する最大の理由は、自社では得られない「違うもの」を運んでくれることを期待しているからです。主に、以下のような能力が求められます。

  • 企業のルールを理解しながら、ディスカッションを通じて「異なるアイデア」を提供する
  • 経営に参画することで意思決定スピードを速められる
  • 経営者の意志を的確にくみ取りながら、執行していける

一方で、企業の現在、またそこで働く社員に寄り添える人材でなければ、能力を発揮し続けることはできません。自分の能力に確固たる自信を持っているだけでなく、歩み寄りの姿勢や共感・理解しようとする人間力の高さが求められます。

役員を目指すための転職活動の進め方

役員人事は、企業経営の非常に重要な部分に属しているため、「求人に応募したから役員になれる」といったものではありません。役員人事は企業内でも極秘裏の扱いとなっていることが多く、通常の転職活動で役員の座に就くことは困難でしょう。

役員として転職を希望する際には、ハイクラス人材に特化した転職サイトや転職エージェントを活用したり、専門のヘッドハンターに相談したりすることも方法の一つといえます。

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転職活動する際に注意したいこと

役員に限らず、転職活動では事前準備や企業調査をしっかりと行うことが大切です。転職エージェントやヘッドハンターに任せる場合でも、積極的に質問ができるように企業の周辺情報をチェックしておきましょう。

役員は、経営層として事業の執行役を務めます。企業の目標や社風といった点に違和感があると、内部に入ってからミスマッチを生む原因となりかねません。関係者と納得するまで話し合いを重ねて、出来る限りグレーゾーンを減らすよう、話し合いを重ねましょう。

役員として就職できない場合でも、役員候補といった条件が確実であれば検討する余地があります。転職後、すぐに役員になれないときには、中長期的に目指していくのも一つの選択肢です。

【現職が役員の方】転職する場合に注意したいこと

現職が役員で、他の企業への転職を考えている場合には、注意すべきポイントがあります。基本的に、役員任期中の転職(活動)は避けるのが常識といえるでしょう。
もちろん、憲法上は職業の自由が個人に認められており、役員であっても変わりはありません。しかし、現在の企業で重職に就きながら、転職活動を行うことは倫理的なリスクがあります。
企業によっては、競業避止義務を課している場合もあるでしょう。競業避止義務とは、在籍中や退職後に同業他社への就職を制限するものです。

こうした制限がない場合でも、「秘密保持義務の厳守」「現職の従業員や顧客を引き抜かない」などは、ビジネスパーソンとしての基本です。どのような場合であっても、現職企業への損害を与えないことが最低のラインと心得ておきましょう。

また、退職時や入職時に、誓約書への署名を求められた場合は、内容を十分に精査する必要があります。なぜなら、上述したように就業避止義務が記載されていると、転職に影響する恐れがあるからです。

署名は義務ではありませんが、悩む場合は弁護士に相談するなど専門家の意見も参考にしましょう。退職を伝える際、転職先を現職場に伝える必要はありません。余計な詮索をされたり、退職までの期間に居心地の悪い思いをしたりする可能性もあります。

なるべく波風を立てずに転職するためにも、現職場では転職の話はあまりしないほうが賢明です。また、ヘッドハンティングで法外な金額のオファーをされた場合は注意しましょう。あまりにも現職よりも待遇がアップする場合は、真意を十分に確認することが重要です。

役員の募集は水面下で行われることが多い

役員の求人は、スタートアップやベンチャー企業が明るい材料として公表するとき以外で表面化することはほとんどありません。役員人事の動向は、企業運営に大きく関わる重要事項となります。そのため、公開されている求人は少ないことを認識しておきましょう。

転職で役員を目指す場合は、ヘッドハンティングサービスやエグゼクティブの転職に実績を持つ転職エージェントを活用してはいかがでしょうか。
非公開求人の紹介を受けるチャンスが広がるため、希望の求人に出会えるかもしれません。

監修

澤本 静
パーソルキャリア(株) エグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント

大手人材総合サービス会社にて、法人営業、カウンセラー、新規事業立上げ、マネジメント業務に携わった後、最大手医療ポータル運営会社にて新規事業開発に従事。その後、当社に参画。経営企画・新規事業企画職全般の転職支援に強みを持つ。

[編集・構成]doda X編集部

この記事のポイント

Q.役員の転職が難しい理由は?
A.役員の求人は多くの場合、変革が求められる局面にあり、社内では育ちにくい執行力を期待されています。内部からの反発が予測される中で、わざわざ外部からの人材を登用することに対しては、十分に覚悟を持って臨むことが必要です。早期に求められている結果が出せない場合は、実力不足で苦しむこともあり得ます。また、望まれて入社した場合であっても、社長や社内メンバーとの相性や複雑な人間関係に悩むことも少なくありません。
Q.役員になるメリットは?
A.役員になる最も大きなメリットは、経営に直接携わるということです。任された分野については、自分の裁量で最終決定ができます。
もちろん、大きな責任は伴いますが、それ以上のやりがいを感じられるでしょう。たとえ、勤める企業の規模を小さくしても、腕を試してみる価値はあります。

Q.役員に求められる実績や役割とは?
A.日系企業の場合、基本的に役員経験者にしか声がかからないのが一般的です。「変革が迫られている」「新規事業の立ち上げ」といったタイミングであれば、その分野のプロとしての実績が求められます。
外資系企業の場合は、語学力と海外のビジネス事情に通じていることが前提となります。また、本国との調整役として、国内事情を的確に説明できる高いコミュニケーション力も求められます。
そのほか、マネジメントスキルや経営者視点、社風に合う人間性などが求められます。
Q.役員とは?
A.日本の会社法における株式会社の役員は、「取締役/代表取締役」「会計参与」「監査役」の3つです。

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