イチローに学ぶ、 プレッシャーに負けないための習慣化の意味とは

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この記事は2013年9月9日に掲載されたものです。

8月21日(現地日付)、ニューヨーク・ヤンキースのイチロー外野手が、日米通算4000本安打を達成し、その偉大なる記録達成に日本中が沸きました。記録への達成の瞬間と同時に、達成後に行われた記者会見の様子をご覧になった方も多かったと思います。

その中で語られた「4000のヒットを打つには、8000回以上の悔しい思いをしている」や「記憶に残っているのは上手くいかなかったこと。そのストレスを抱えた中で、瞬間的に喜びが訪れ、はかなく消えていく」などといった発言が印象的でした。

日米通算4000本安打達成のイチローが会見(全文掲載)/一問一答   >>記事元

イチローはこうしたプレッシャーやストレスに、どのように立ち向かっていったのでしょうか?

数々の偉業を成し遂げてきたイチローは他の選手と何が違うのかについて、かつてイチローの専属投手も務め「イチローの恋人」とも称された奥村幸治氏は、「習慣化」にあると言っています。

有名な話では、毎朝同じ量の同じ味のカレーを食べることや、ネクストバッターズサークルでの屈伸、バッターボックスに入る前とピッチャーが投げるまでの行動など、ロボットかのごとく習慣にしています。

そしてその「習慣化」こそ、ストレスやプレッシャーに立ち向かうために効果的な手段だと言われているのです。

その意味を、コロンビア大学で「モチベーション」テーマに研究する心理学博士であるハーバーソン氏が語った、科学に基づいたストレス対処法に沿って紹介します。

『Nine Things Successful People Do Differently(成功する人が実践する9つの行動)』   >>参考書籍

ハーバーソン博士は、著書の中で成功する人の9つのストレス対処法の一つとして、「習慣化」することの重要性を説いています。

私たちは、イチローほど大きなストレスに悩まされることはないですが、日々の生活の中でたくさんのストレスを感じています。納期の短いスケジュールや増え続ける仕事、 また理解のない上司や、動いてくれない部下など。

ハーバーソン博士は、こうしたストレスの大きな原因の一つは「決定することが多いから」だと主張しています。新しい社員を雇うとき、上司との会議日程を決めるとき、朝食のパンを選ぶときなど、私たちの日常生活には決定することが数多くあります。このようなとき、私たちは一時的に緊張状態にあり、これがストレスを感じる原因となっています。同様に、ショッピングへ行くと疲れるのは、買うかどうかの決断を何度も繰り返しているからです。

著書『選択の科学』で有名なシーナ・アイエンガー教授も同様の主張をしており、教授が行ったジャムの実験でも、そのことをよく表しています。

『選択の科学』   >>参考書籍

食料品店の入り口付近の試食コーナーに24種類のジャムと6種類のジャムを並べた場合、より多く購入されるのはどちらかを実験しました。結果、試食に客が立ち寄る率は24種類の方が多かったのですが、売り上げは6種類のジャムしかない(品揃えが少ない)方が10倍もあったと言います。

つまり、選択肢の多さがストレスとなり、判断を先送りさせてしまったのです。

このようなストレスを抑えるためには、日々の行動を習慣化して、決定する回数を減らす必要があります。毎日やらないといけないことがあるなら、毎日同じ時間にやり、朝の支度や仕事終わりの片付けなど、繰り返す行動は習慣化してしまうことです。

アメリカのオバマ大統領も日々のストレスに対処するために「習慣化の力」を利用しているようです。米誌『Vanity Fair』のインタビューでは次のように語っています。

毎日起こる小さな問題に無駄な時間を取られないようにしないといけません。私はいつもグレーかブルーのスーツしか着ないことにしています。選択肢をわざと狭めているのです。私にはもっと重要な決断が他にたくさんあります。何を着るか、何を食べるかといったささいなことを決めるのにエネルギーを使いたくないのです。大切なのは、決定に使うエネルギーを本当に重要な問題だけに使うことです。そのために習慣化が必要なのです。

Vanity Fair/Michael Lewis: Obama’s Way   >>記事元

イチローが毎日行う習慣化された行為は、ヒットを打つための単なる「げん担ぎ」ではなく、科学的根拠に基づいたストレス対処法であり、重要なことに集中するための儀式でもあったのでしょう。

日々決断の多いマネジャーやリーダーの皆さん、イチローのように「習慣化」できることを見つけ、重要な意思決定のためにエネルギーを使いましょう。

[ 執筆 ]菊池龍之(株式会社コヨーテ代表取締役)

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