「最高の上司」になるのに必要な資質とは? 必読ビジネス書7選
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あなたにとって、「最高の上司」とはどのような人ですか?
会社のビジョンを生き生きと語れる人、部下の意見に常に耳を傾けてくれる人、他人に厳しくも結果はかならず残す人ーー。いろんな人の顔を思い浮かべたのではないでしょうか。
『“未来を変える” プロジェクト』では、この「最高の上司」をテーマに約40名の読者イベントを開催。最高の上司の定義、自分たちがそうなるために必要なことについて議論しました。
本記事では、イベントに参加した人が推薦する「名著」を7冊ご紹介。並べてみると、変化が激しい時代に、「普通の上司と最高の上司を分けるもの」が浮かび上がってきます。
『ワーク・ルールズ!ー君の生き方とリーダーシップを変える』 ラズロ・ボック 著

多くの人が働き方が変わりつつあることを認識し始めている。今後の組織の在り方について考えさせられる(30代・男性・フリーランス)
「最高の上司」像は、時代によって変化する。これがイベントに参加した読者に共通する考えでした。なぜなら、上司に求められる役割は、「組織」によって異なる。その組織自体が、時代の変化を受けて、変わりつつあるからです。
では、これからの時代、組織と上司の役割はどのように変化していくのかーー。それを、世の中にもたらすインパクトが大きいだけでなく、マネジメントの観点で手本とする方も多い「Google」に学ぶのが、この本の趣旨です。
著者は、Googleの人事トップであるラズロ・ボック氏。同社が6000人から6万人規模に拡大する過程の人事システムを設計した人物でもあります。同氏が、Googleの採用、育成、評価の仕方など、マネジメントについて語った一冊です。
Googleにならうなら、これからの時代の「優れた組織」とは、社員一人ひとりがまかされたミッションを遂行するだけでなく、一人ひとりの成長を支援することで組織全体の競争力を高められる組織。
そのような組織において、上司とは「チームに奉仕する人」。部下に賞罰を与えるのではなく、障害を取り除いてチームを鼓舞することに集中する人という位置づけなのだそうです。
そんな上司を育てるために、Googleは上司が何より頼りにしている「ツール」を取り上げてしまう。それはつまり、権力。例えば、「誰を採用し、部下の業績をどう評価し、誰を昇進させるか」、その判断を自分の一存では下せなくしているのだとか。
その代わり、仕事に意味を持たせ、部下を信用し、対話を通じて部下の安心と生産性を向上させることでパフォーマンスを引き出し、業績の高い部下にはチームの手本になることを推奨し、業績の低い部下を思いやることを、Googleの上司は求められます。
世界最高と賞賛される企業で、「最高の上司」と呼ばれる人にはどのような資質が備わっているのか。この本で触れてみてはいかがでしょうか。
『U理論ーー過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』 C・オットー・シャーマー 著

過去の成功パターンを部下にコピペするのではなく、多様性が求められる中で部下の持っている力を最大限に発揮させ、パフォーマンスさせる人が最高の上司なんじゃないか。自分の過去の経験にとらわれず、未来志向で物事を考え、行動するための本です(20代・女性・人材業界)
部下の力を発揮させるという上司の役割は、昔から変わっていないかもしれません。しかし、この読者のコメントで興味深いのは、「多様性が求められる時代においては、自分の過去の経験にはとらわれてはいけない」という指摘です。
つまり、若いころの自分を再生産し業績を挙げるだけでは、良い上司とは言えない。そもそも、部下一人ひとりの特性が多様化する中で、若いころの自分を再生産すること自体、難しくなっているのではないかということーー。
こうした時代の変化を踏まえ、上司が自らの過去の成功体験にとらわれず、ビジネスやマネジメントについて思考するための方法、その一つが「U理論」です。U理論は次の7つのステップで構成されます。
- ダウンローディング:過去の経験から培われた思考パターンにとらわれる
- 観る:思考パターンに意識を奪われず、目の前の事象に意識の矛先を向ける
- 感じ取る:他者など過去の思考パターンにとらわれていない立場から見つめる
- プレゼンシング:自分のより深いところからアイデアが浮かび上がる
- 結晶化:未来の最高のイメージからビジョンを具体的な言葉で形作る
- プロトタイピング:ビジョンを具現化し、形を与える
- 実践:プロトタイプを通して得たものを世の中に提供していく
著者いわく、これからの時代、自分一人で何か問題を解決するのはますます困難となるため、上司には集合知にアクセスできる力が求められていくそう。それを阻害するのが自らの成功体験だとすれば、ぜひ学んでおきたい理論です。
『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 森岡毅 著

安心安全な場作り、チーム作りができて、かつチームの最高のパフォーマンスを引き出すのが最高の上司。私にとっては、元USJの森岡毅さんです(40代・男性・フリーランス)
読者が「最高の上司」と推すのが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの元CMO(最高マーケティング責任者)の森岡毅さん。
2001年に大阪に誕生し、しかし来園者が激減、その後「後ろ向きコースター」「ゾンビの大量放出」「絶対生還できないアトラクション」など斬新な企画を次々に打ち出し、V字回復を果たしたキーマンです。
森岡さんの「代表作」と言えば、書籍のタイトルでもある、逆走するジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド 〜バックドロップ〜」。疲れて帰宅したある日、夢に出ていたアイデアを具現したそうですが、それはいばらの道だったそうでーー。
チームの技術者の中には、「後ろ向きコースターのアイデアがそんなに消費者にウケる素晴らしいアイデアならば、(中略)既に思いついてやっているはずです。(中略)存在しないことを見れば、それをやらない方が良い理由が必ずあるはずです」という人も。
そうしたチームの懐疑的な見方を覆すほどの執念が、日本でのアトラクションの待ち時間記録(9時間40分)を打ち立てるほどの成功につながったそう。万策尽きても考え抜き、できない理由を並べるのではなく諦めない人は、確かに最高の上司像ですね。
『自衛隊メンタル教官が教える 折れないリーダーの仕事』下園壮太 著

責任の取り方、仕事の進め方、過去の仕事にとらわれない判断など、上司に求められる資質について漏れなく書いてあります(30代・女性・フリーランス)
他とは毛色の異なる一冊です。著者は、陸上自衛隊初の「心理幹部」としてリーダー育成に取り組む下園壮太さん。日本有数の「ハイプレッシャー組織」、自衛隊における上司像が描かれています。
最高の上司を目指す上では、業績を挙げることも大切ですが、前提としてチームが折れず、潰れず、長期戦を戦い抜くことが必要。そのために著者は、「仕事を切る」「意図を伝える」「団結する」「疲労コントロール」「ダメージコントロール」の5つを挙げます。
例えば、「仕事を切る」では、「仕事を丸ごと切る」「仕事の完成度を下げる」「一定の時間で切る」「延期する」という部下が判断することは難しい、上司ならではの4つの方法を紹介。
また、チームの疲労度が増しているときは、上司も疲れているときであり、すると部下に情報が伝わりづらくなる。よって、上司は自らの疲労度を常に把握、コントロールする必要があり、そのための具体的な方法も自衛隊では用意されているとのこと。
最高の上司が徹底すべきチームと自己管理を学ぶことができるでしょう。
『異文化理解力ー相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養』 エリン・メイヤー 著

組織やマネジメントを考える上で、業種、あるいは国など「前提」の違い、それぞれの特性を知るのは大切なことかと(20代・男性・IT業界)
ところ変われば、最高の上司像も変わるということで、こちらの本。トップビジネススクール、INSEADの客員教授で異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学が専門のエリン・メイヤー氏の著書です。
文化の違いが特に生まれやすい、以下の8つのマネジメント領域について、国ごとの特性の違いやそれを踏まえた上でのマネジメントの技術が書かれています。
- コミュニケーション(シンプルで明確↔︎繊細で含みがある)
- 評価(直接的なネガティブ・フィードバック↔︎間接的なネガティブフィードバック)
- 説得(原理優先↔︎応用優先)
- 敬意(平等主義↔︎階層主義)
- 決断(合意志向↔︎トップダウン)
- 信頼の築き方(タスクベース↔︎関係ベース)
- 見解の相違が顕在化したとき(対立↔︎対立回避)
- スケジューリング(連続的、迅速に↔︎柔軟に)
例えば、「2. 評価」の領域では、日本人は「間接的なネガティブ・フィードバック」なのに対して、日本人と相性が良いとよく言われるドイツ人は「直接的なネガティブ・フィードバック」。
このように、自分たち日本人と相手の文化がどのくらい違うかが分かり、分かれば上司としての接し方を変えることができます。外国人の部下がいる方は必携の一冊。
また、より本質的には、部下がたとえ日本人であっても、自分と相手とのバックグラウンドの違いを踏まえた上でマネジメントすることの重要性を再認識できる本でもあります。
『マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』 テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー 著

今売れに売れているビジネス書の一つです。26のチームの238名の「日誌」の分析結果に基づき、マネジメントにおいて大切なのは、評価でもインセンティブでも明確な目標でもなく、「進捗」であることを提唱します。
本書によれば、上司にとって最も大切な仕事は部下のモチベーション、つまり個人が内面で感じる仕事体験に対する満足度を管理すること。その満足度のことを「インナーワークライフ」と呼んでいます。
そして、インナーワークライフに影響をおよぼす要因は3つ。
- やりがいのある仕事における進捗
- 自分の仕事を支援してもらう「触媒ファクター」
- やる気を増発される人間関係という「栄養ファクター」
特に、「1. 進捗」が部下のパフォーマンスを最大化させるそう。さらに、インナーワークライフを阻害する要因として、「仕事の障害」「仕事を直接妨げる阻害ファクター」「悪性な人間関係」を紹介。上司としてはぜひ取り除いていきたいものです。
心理学的アプローチから導き出された最新の経営学の知見を武器に、最高の上司を実践的に目指してみてはいかがでしょうか。
『人を動かす』 デール・カーネギー 著

ここまでの6冊は、最新の「働く」の変化をとらえた上での上司像を描いたものでした。そうではない、「時代を超えて普遍な最高の上司とは?」を知るべく、最後はリーダーシップに関する往年の名著を取り上げます。
1936年に出版されたこの本でカーネギーは、上司の振る舞いに活かせる「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」を紹介しています。
- 人を動かす3原則:批判も非難もしない、苦情も言わない。率直で誠実な評価を与える。強い欲求を起こさせる。
- 人に好かれる6原則:誠実な関心を寄せる。笑顔で接する。名前は当人にとって最も快い、最も大切な響きを持つ言葉であることを忘れない。聞き手にまわる。相手の関心を見抜いて話題にする。重要感を与える。
- 人を説得する12原則:議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける。相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない。自分の誤りをただちに快く認める。穏やかに話す。相手が即座にイエスと答える問題を選ぶ。相手にしゃべらせる。相手に思いつかせる。人の身になる。相手の考えや希望に対して同情を持つ。人の美しい心情に呼びかける。演出を考える。対抗意識を刺激する。
- 人を変える9原則:まずほめる。遠まわしに注意を与える。まず自分の誤りを話した後、相手に注意を与える。命令をせず、意見を求める。顔を立てる。わずかなことでも、すべて惜しみなく心からほめる。期待をかける。激励して、能力に自信を持たせる。喜んで協力させる。
「最高の上司のためのチェックリスト」のようですね。本の中では、それぞれの原則についてカーネギー自身の経験談が語られています。
その他紹介されていた書籍
*カッコ内は推薦コメント
- 『葉隠入門』 三島由紀夫 著
- 『「みんなの意見」は案外正しい』 ジェームズ・スロウィッキー 著
- 『なぜ会社は変われないのかー危機突破の風土改革ドラマ』 柴田昌治 著
- 『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 ユヴァル・ノア・ハラリ 著(社会や働き方の変化によって最高の上司は変化する。人類の誕生と人が生体系のトップに立つまでの経緯が書かれており、実は戦略論や組織論の根底はここにあるのではないか)
- 『TEAM OF TEAMS』スタンリー・マクリスタルら著(上司≒組織であること。つまり組織の在り方が変わらなければダメである。アメリカ陸軍が、迅速な決定を阻害するピラミッド型の組織構造をどう克服していったかを描いた組織改編のストーリー。上司の在り方についても参考になります)
「最高の上司」を志向する上で必読の7冊、いかがでしたか。気になったものから、ぜひお手に取ってみてください。
[文] 岡徳之
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