社内政治に頼らず新規事業開発を成功させる9つのコツ

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新規事業の開拓、新しい分野への挑戦の必要は、昨今、大企業では当たり前のように語られています。と同時に、その当事者であるみなさんにとってはいつも頭の痛いテーマでもあるのではないでしょうか?

一方で、この変化の激しい時代にあって、大企業における「新規事業」への取り組み方、成功パターンといったものは、5年前、10年前とは異なる要素、異なるアプローチが求められている可能性もあります。

こうした背景から「いま個人として、新規事業に求められる力とは何か?」をテーマに、実際に新規事業に関わり、それを成功させてきた方々、およびこれから新規事業にチャレンジする方々、約50名で議論しました。本記事では、その内容を集約してお届けします。

結論から言えば、今回の最大の示唆は、

社内調整や二枚舌が重要だという言い訳、社内への意識が強すぎて、新規事業において本来新しいことに取り組むときの“自分が楽しむ”ということを忘れてませんか?

ということ。この点を中心に、新規事業に取り組む個人として、何を磨くべきか、何を温めるべきかを考える際にご参照ください。

今回の記事のアウトラインです。

INDEX読了時間:5

本文です。

新規事業のコアとなるのは自分自身が熱中できるテーマ

新規事業と大げさにいっていますが、それって当たり前のことでしょう?

これは、今回の冒頭セッションにも登壇した、某大企業で新規事業の立ち上げをいくつも成功させた人物の一言。彼が主張するのは、ものすごいリサーチをしたり、外部のネットワークに情報を取りに行ったりする前に、休日や日常の中で自分が感じることを素直に育て、それを事業にすればよいという指摘でした。

例えば、セブン-イレブンでいま、コーヒーとセットでドーナツが販売され始め、大ヒットしています。あれも当たり前の話で、日常でコーヒーを飲んだら、ドーナツがあったらいいと思いますよね。同じ、同じ。

マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、多くのイノベーション案件を手がけてきた籠屋邦夫氏も、大企業の新規事業を支援した経験から、こう指摘します。

新規事業において社内の説明が通らない、通らない、上の連中は、新しいことを分かってくれないという相談をよく受けましたが、実際は違うんですよ。単に、本人がそこまで“これは面白いからぜひやろう”って、思っていないだけなんです。

自分の中にある「そのテーマに対して感じている面白さ、情熱」といったものがあって初めて、周囲の説得もできるし、継続的にその営みを大きくすることもできる。

これこそが、実際に新規事業に関わり、そして成功させてきた方々が共通して指摘する点でした。

思ったことをストレートに口に出す、何も考えずに…。これ、新規事業を考える上で最も大切なことだと思います(40代・男性・流通小売業)

この「情熱」を育み、その熱量をベースとして社内を巻き込み、そして熱量を持続させる。この流れこそが「新規事業」を育むときに必要なプロセスであるというのが、今回ご紹介する内容の骨子です。

新規事業成功へのMAP

新規事業のテーマに対する情熱の3つの育て方

主に下記の3つが、情熱を育てる上で効果的なアプローチとして提示されていました。

コツ1:「行動してから整理する」ことで日常生活での感覚を研ぎ澄ます

コツ2:自分が「当事者」であるテーマにフォーカスする

コツ3:誰にも邪魔されない「ヤミ実験」を行う

コツ1:「行動してから整理する」ことで日常生活での感覚を研ぎ澄ます

日常生活を楽しむとき、普通はそこまであれこれ考えてから行動するのではなく「あれがしたい」「ここに行ってみたい」「それが飲みたい」といった気持ちが先に立つのではないでしょうか?こうした気持ちに沿って素直に行動していくと、何か不便に突き当たったり「もっとこれができたらいいのに」という渇望を感じたりします。

こうした感覚は、経験してから数時間もするとスッと消えてしまうため、一日の終わりなどにメモしておくと、後々引き出すことができます。そうして、突き当たったこと、楽しんだこと、困ったことなどを後で思い返し、唸ってみると「なるほど、だったらあれをやってみたらいいかも」といった方策が浮かんできます。

新規事業において当たり前のこと、日常のチョットした気づきを捉え直す力が大切。「ヴュ・デジャ(デジャヴュの逆)」という言葉が印象に残りました(20代・男性・ベンチャーキャピタル)

いらだち、感動という感性が動いた出来事は、その後事業開発をする上でも、非常に共感を得やすいことなので、なんなら記憶に残る写真や動画を撮っておくのもいいですよね。後のプレゼンの素材にもなりますし(30代・事業開発担当)

個人がやりたいことと、会社がやってほしいことをすり合わせるプロセスを会社がメソッドとして持っていれば、もっとたくさんの新規事業が生まれると思います(40代・大手不動産会社)

コツ2:自分が「当事者」であるテーマにフォーカスする

特定のサービスに対するインタビュー調査をするときに「そのサービスを実際に必要としているひとに話を聞かないと、ほとんど意味が無い」というのは、調査設計でよく知られる原則の1つです。

実際に、生命保険に関するあるインタビュー調査では、保険にほとんど興味のない新婚カップルに保険販売のウェブサイトのことを聞くと、全般的に「こんなところでは購入しない」「なんだか楽しくない」といった返答が多かった。しかし、現在進行形で検討を行っているカップルからは「この情報は、とても役に立つ」「もっと真剣にここで考えてみたい」といった返答がありました。

こうした「自分が当事者である」ものに対する捉え方は、そうでないひととはまったく異なるものとなります。事業開発の場面においても、自分自身が興味関心が高かったり、まさにそのテーマの渦中にあるものを選択すると、まったく違ったのめり込み方をすることができます。

「新規事業なんだから、枠にとらわれずに考えろ」という指示があれば、しめたもの。ぜひとも、自分自身が新規事業の「当事者」であるテーマを積極的に選んでみましょう。

新規事業に「信念」や「パーソナルビジョン」は重要と言われるが、それらは決して先天的(幼少期の原体験など)や普遍的なものではなく、新規事業に関わる自分なりの理由(意味付け)として考えたほうがしっくりくる(20代・男性・人材関連企業)

コツ3:誰にも邪魔されない「ヤミ実験」を行う

テーマとしての面白みがあり、何か深掘りしてみてもいいかなというものが発見できたとき、事業開発の達人たちは、いきなり組織説得などに進むようなアプローチはしません。

多産多死とはよく言ったもので、大体思いついたアイデアのうち8〜9割は、結局ダメになりますね。その8〜9割をどうやって葬っていくかが実験のポイントですね(30代・男性・金融系)

意外と「これは私の『自由研究』なんです」と言って伝えると、利害関係者も警戒せずにいろいろと話してくれます(30代・男性・事業開発担当)

具体的な実験方法には、以下のようなものがあります。

・架空のアイデアを、あたかも実際のサービスのように同僚・友人・家族などに語ってみて、反応を観察してみる。

・10分程度のプレゼンテーション資料を作って印刷し、仕事の打ち合わせの前後などに「ところで、最近こんなものがありまして」と説明してみる。

・その分野の専門家や本職のひとに頼んで、それっぽいものを作ってもらって試してみる(例えば、ソフトウェアなど)。

こうしたことを行うと、2つのことが起きます。

1つ目はもちろん、相手からの反応。理屈としてよりも、相手の反応や、感情的な面から「これは本当にほしい」とか「いくらで買えるの?」といった反応が重要になります。

2つ目は、自己完結的な整理。実際に、ひとに口頭で説明してみたり、そのためのプレゼンテーション資料を作ったりしてみると、そのテーマに関して必然的に詳しくなり、同時に「なぜこれをやるのか?」について、相当考えさせられます。こうしたプロセスの中で「これはいける」「よく考えたらこれはない…」という判断ができるようになります。

新規事業のおける社内の巻き込みは情熱が高まってから着手する

自分の情熱が十分に高まる前に、社内巻き込みに進むべからず。

これは、大きな企業、大きなリソースを動かそうとするときの鉄則とも言えるかもしれません。

今回の議論の中で、実際にあまり大企業での経験がなく、主にベンチャーなどで活動してきた方々からは、

大企業では、青い志とともに、社内を動かすための腹黒さを持ち合わせる【青黒さ】が重要であるという声に驚きました(40代男性 会計事務所)

といった声も聞かれ、大企業での「社内を動かす腹黒さ」に注目が集まっていました。

「腹黒さ」は言い換えれば、これから仕掛けようとしている新しいテーマが、既存の関係者から理解されにくかったり、一見、会社の方向性に合致していなかったり、あるいは過去の否定につながったりするときに、それを上手く二枚舌やステルス的な動き(言っていることとやっていることをズラす)などを駆使して、調整する力のこと。

こうした「社内の既存の方向性との調整」には、結果的に、自分の持っている情熱やテーマよりも、社内の既存の興味・関心・現状にフォーカスを向けてしまうという大きな副作用も潜んでいます。

高い情熱や熱意からスタートした場合、その提案自体が地力を持っているため、多くの説得の場面において、素直にその地力を伸ばしていけば周囲の巻き込みができます。一方で、地力が低い状態、まだ自分の中であまり確信のない状態で周囲を説得しようとすると、結果的に「周囲のことばかり」気にしてしまい、つまらない結果に陥ってしまうのかもしれません。

社内は最後。アーリーフェーズでは顧客になるひとたちの評価を得て、外堀から固めることを意識しています(30代・大手組織コンサルティング)

「良い意味での腹黒さ(?)」について考えると「行くべきか、行かざるべきか」のタイミングや時の流れを見極める力なのかなとも思いました。いまそのプロジェクトを強力にアピールすべきか、ひそかにヤミ実験をしておいて、ここぞというときに出すべきか。組織の潮目を見ていくことなのかも(50代・男性・大手流通グループ)

対立や孤立を避け、情熱で周囲を巻き込む3つのコツ

では、実際に情熱が十分に高まったとして、より効果的に大組織を巻き込むためにはどうすればよいのでしょうか?ここでは、その3つのコツをご紹介します。

コツ4:取り組みの主語を自分でなくテーマにする

コツ5:失敗や挫折を組み込んだストーリーを共有する

コツ6:やってほしいこと、助けてほしいことを具体的にリクエストする

新規事業で上手くいく巻き込み方

アメリカ独立戦争で有名なベンジャミン・フランクリンは、自伝の中で多くのひとを動かすコツについて、こう指摘しています。

大小のさまざまな運動に人を巻き込もうとしたら、それは自分たちがやっていることを手伝ってほしい、と言わないことだ。そうではなく“自分の友人たちがやっているこういう営みがあって、それに参加してほしい”と誘うのがコツだ。

ひとは何か大きな営みがあったときに、その内容に賛同していればその一部となって活動したいという欲求があります。一方で、誰かがやっていることに対して、その個人に賛同しようというのは面白くありません。なおかつ、相手の地位や名声、実績を上げるということが気になってしまい、ついつい敬遠してしまうこともあります。

こうした心持ちを踏まえて、自分が抱えているテーマを周囲に説明するときも、自分が主語になって、自分に賛同してくれという伝え方を控え、代わりにその営みに対する賛同を求めるようにするのが効果的です。

具体例でいえば、

☓「いま僕らのプロジェクトチームでは、これまで新聞を読まなかった若者に、新聞の持つ特性を身近に感じてもらえるサービスを考えているんだけれど、協力してくれないか?」

◯「これまで新聞を読まなかった若者に、もっと新聞の持つ特性を身近に感じてもらえるサービスを考えようというテーマで議論しているんだけれど、よかったら一緒に検討に加わってくれないか?」

といった、主語が自分たちのチームなのか、それともそのテーマなのか、表現にちょっとした違いが生まれます。

また、このテーマ設定には、以下のような指摘もありました。

テーマ設定に関してさらに言うならば「共感の得られるテーマ設定」かもしれません。ここでいう「主語を自分ではなくテーマ」にするというのはそのとおりですが、さらに「乗りやすいテーマ」「テーマを乗りやすく、意義深いものに転換していく」ことが大切かもしれません(30代・広告代理店)

社会的意義がより大きいテーマが設定されていると、テーマによる巻き込みもさらに強力なものになるのかもしれません。

コツ5:失敗や挫折を組み込んだストーリーを共有する

多くの同僚が既存事業に取り組む中、新規事業を取り組む立場に共感してもらうためには「追体験」がキーワードになります。「もしも自分がその立場、その場面に直面したら、きっと自分もそう思うだろう…」という感覚こそが重要です。

その中でも特に重要なのは「そもそもそのストーリーを聞きたくなるか?」という点です。ポイントは「失敗や挫折」が組み込まれている点にほかなりません。

結論から言うと「応援したくなる力」になるのだと思いました(30代・女性・コンサルティング)

ハリウッドの脚本家の教科書としても知られる『STORY』という脚本術の書籍でも知られる、ひとが共感するストーリーの構造は下記の通り。

  1. 背景やバックグラウンドが解かるプロローグ
  2. そのひとの渇望や方向性
  3. 旅立ち、挑戦する
  4. 失敗、挫折し、壁にぶつかる
  5. 修行し成長する
  6. 壁を乗り越える
共感を得られるストーリー構造

この流れは、個人の人生の縮図そのものであり、だからこそ個人が追体験でき、ストーリーとして魅力を感じるのです。

同様に、事業に関する挑戦を語るときも、この構造を欠かさないようにすることがポイントです。

例えば、下記のような内容です。

みなさんご存知のように、当社が展開する金融サービスは、投資に興味・関心が高いひとたちには高い頻度で使われている一方で、資産を形成しようとする多くの30代前半の男性にはほとんど知られていません。この状況を解消すべく、主な読者層が30代男性の趣味系雑誌とタイアップした新しいメディアの立ち上げを検討しているのですが、そうした雑誌社と打ち合わせをしてみると、ここまで散々な結果です。そもそもみなさん“小難しい話は好きじゃない”とか顔をしかめて・・・。

ついつい、通常の業務報告や仕事でのレポートでは、こうした失敗・挫折部分は省略し、その先の結論や現時点での方向性に注力しようとしてしまいますが、それをあえてオープンにすることで、これら新規事業に普段接していないひとたちからも「自分もそうだったら凹むよな」「頑張っているじゃないか」といった共感を得ることが可能となります。

コツ6:やってほしいこと、助けてほしいことを具体的にリクエストする

組織内部で共感を得ることができ、応援してもらえる流れが生まれつつあるときに、新規事業に小慣れたひとたちがこだわるのが「具体的なリクエスト」という点です。

「いろいろ困ったり、困難なことばかりなので、みなさんのご支援をよろしくお願いします」では、実際に周囲からの支援を引き出すのは難しいです。支援を求める場合は、相手の行動を引き出すために次のポイントを抑えたリクエストを行います。

・相手にあわせて3段階の難易度のリクエストをして選んでもらう

・リクエストの内容は具体的、かつ明確に

・メール文面やパワーポイント資料などテキスト情報にする

この3つの点を抑えたリクエストは、相手が自分で踏み込んでどこまでやるかを選択することができ、一度やると決めたらすぐに行動できるため、上記のような曖昧なリクエストよりも、はるかに行動を容易に引き出すことができます。

我が身を振り返って、新たなチャレンジをする際に、周囲を巻き込むために一番効果的であったであろうことは、自分の情熱を注ぐ対象とその対象に向かって熱中するプロセスを、自分と一緒になって体感してもらうことではないかと思っています。やはり人間、頭で云々考えた結果生み出した結論より五感で体感経験の方を大切にしがちです。まずはとにかく動いてもらう、経験してもらうということが大事だと思います(30代・男性・金融関係)

この手の協力を求めるケースでは、ティップス的ですが、メールで実施する場合はメーリングリスト化したり、あるいはチャットツールなど全員公開の中でやることがお薦めです。

ひとが協力している内容を見ると、他のひとも「私もやらないとな」感が出るのでよいです。ちょっと脅迫的かもしれませんが(30代・男性・新規事業担当)

新規事業への情熱を持続させるための3つのコツ

本人の中で生まれた情熱がコアとなり、周囲をそこに巻き込むことができたら、最後にポイントとなるのが、発生した情熱を持続させるための方法です。

情「熱」というくらいですから、そのメンテナンスを怠ったり、大きな困難に直面したりすると「熱」が急激に冷めてしまうリスクに、常に新規事業担当者はさらされます。

これを克服するためのポイントとして、主に下記3点が挙げられていました。

コツ7:常に議論できるノリの合うパートナーを作る

コツ8:締切効果を利用する

コツ9:外部の人にプランをぶつける

コツ7:常に議論できてノリの合うパートナーを作る

パートナー

新規事業の立ち上げでは、大小さまざまな「未体験」のことに取り組むため、参照する前例がなかったり「えいや」でどちらにすればよいか確証が持てなかったりする場面が多々あります。

こうしたとき、自分一人で悩んでいると、振れ幅が小さくて選択肢があまり出ないですし、行ったり来たりと決断を下すのが難しくなってしまいます。この時間の持ち方によっては「情熱」が冷めてしまう場合があります。

常にそのテーマに一緒に取り組み、ちょっとしたことから大きな決断まで、議論し続けられるパートナーがいると、スピードが持続します。そして、スピードを持続するためには、そのパートナーと「ノリ」が合うことが重要です。

何か新しい課題やアイデアが浮かんだときに、おたがいに「それはいいね、確かにそっちでやってみよう」という価値観や観点が近い組み合わせの方が、真逆の価値観を持っていて、一方がOKとしたものにもう一方がNGを出す関係よりも、決断が早く進む傾向にあります。

ただ、大企業ならではのこのような悩みがあるのも事実かもしれません。

大企業ではノリの合わないパートナーとも仕事しなくてはならないことも多いので、そういうひととでも情熱を持続できる方法について知りたいと思いました(30代・大手コンサルティング会社)

コツ8:締切効果を利用する

チームとして特定のテーマに集中するには、1〜3カ月に1回程度、わざと締切を設けそこに向けて動くという方法が、プランを具体化しやすく、また締切間際に発揮される追い込まれ感といった「締切効果」を活用できるようになります。

通常業務の場合、例えばマーケティング部がキャンペーン案を作ったら、それを営業部に説明し、営業部が具体的なプランの実施を検討するといった関連する部署間の連動など締切が発生しやすいですし、季節ごとにそのリズムが組織全体で作られていることが大半です。

一方で、新規事業の取り組みで、まだ特定の1部門の中だけで動いているような場合、期日に関して積極的な締切がなかったり、年度末までに計画をまとめて報告するなど6〜10カ月といった超長期で締切が設定されてしまったりします。

例えば、そのプロジェクトを担当している役員に対して、2カ月に1回、方向性報告・検討会などをわざと設定し、そこでの発表と議論に備えて動くといったことをすると、この「締切効果」を活かしやすくなります。

コツ9:外部のひとにプランをぶつける

一度、大企業の方のみのテーブルになりましたが、いまの自分の会社での出来事を中心に話されることが多かった(20代・男性・大手電機メーカー)

既存事業と近いテーマに取り組む場合、気をつけるべきは「既存事業の指標で新事業を評価してしまう」という点。元ハーバード・ビジネス・スクール教授のクリステンセン氏が『イノベーションのジレンマ』として指摘するように、こうした評価は新しい事業の芽を摘んでしまうおそれがあります。

例えば、ハードディスク業界は以前【容量あたりの単価】が成長指標だったのが、ノートPCなどの普及によって【容量あたりの重さ・コンパクトさ】が重要な指標に変化していきました。ですが、旧来のメーカーの内部では【容量あたりの単価がすべて】という文化が残っており、結果的に拡大するノートPCの市場を捉えることができなかったということが起こりました。

どうしても、企業内部は既存で取り組んでいることを維持・加速することに思考が集中しがちですし、それはある種、企業としてもあるべき現業への集中の結果。ただ、この流れに身をおいていると、新しく取り組んでいるテーマがどうしても批判的・否定的な意見を受けることが多くなり、結果的に情熱が冷めそうになってしまうことが少なくありません。

そのようなときは、社外のひとたちへのプランの説明、潜在的なユーザーに対する説明や実験が役立ちます。彼らにとって、企業の事情やそれまでの考えなどはまったく関係がなく、ユーザーとしての時代の変化を踏まえたリアクションを得ることができます。

具体的な方法としては、例えば、潜在的なユーザーに対してのヒアリングを定期的に行ったり、B2Bのやりとりの中でそのソリューションを使うであろう他社、自社の中の他部門と議論を行うといった方法が有効です。

ここまで述べた9つの「新規事業に取り組むコツ」を以下にまとめました。いかがでしたでしょうか。

コツ1:「行動してから整理する」ことで日常生活での感覚を研ぎ澄ます

コツ2:自分が「当事者」であるテーマにフォーカスする

コツ3:誰にも邪魔されない「ヤミ実験」を行う

コツ4:取り組みの主語を自分でなくテーマにする

コツ5:失敗や挫折を組み込んだストーリーを共有する

コツ6:やってほしいこと、助けてほしいことを具体的にリクエストする

コツ7:常に議論できるノリの合うパートナーを作る

コツ8:締切効果を利用する

コツ9:外部のひとにプランをぶつける

新しいことに取り組む情熱、自分個人の楽しさをスタートラインにして、そこから「熱量」を上げていけば、これまで「青黒い力」(理想を掲げる青臭さと、二枚舌などを使い分ける腹黒さ)が必要で、高いハードルに感じていた新規事業も、案外容易に動き始めるのではないでしょうか?

[編集・構成]doda X編集部

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