「自分を介したつながり」を増やしていきたい
株式会社スーパーナース・
禧久
小太郎 さん
HeadHunter of the Year 2026
メディカル部門 MVP
禧久 小太郎
営業本部 東日本営業部 東京本店営業部 紹介課 課長
12 万人の登録者と業界における 35 年の実績を持ち、看護師専門の派遣・転職支援サービスを展開する、株式会社スーパーナース。同社で人材支援を手がけているのが、この領域で 20年以上のキャリアを持つ禧久小太郎さんです。
単なる転職支援にとどまらず「10 年後、20 年後にどうありたいか」というそれぞれの将来像からご支援を展開しているという禧久さん。医療機関や企業から得た情報をもとに「職場のリアル」を伝え、より納得感のある転職支援を展開しています。
「一対一にとどまらない支援をしたい」と語る禧久さんに、これまでのご経歴と、普段のご支援の様子について伺いました。
病院以外の選択肢も示し
「目指す姿」に向けた支援を
—— 禧久さんが、転職支援のお仕事を始められるまでの経緯を教えてください。
介護・看護領域の人材業界に携わって、20 年以上になります。しかしキャリアのスタートは、人材支援ではなく、飲食事業でした。大学卒業後は飲食店に勤めるようになり、そこでチェーン店の店長やエリアマネージャーを経験。その後、仲間と 2 人でフランチャイズ店舗を立ち上げるなど、その運営に幅広く携わっていました。
飲食業界を離れたのは約 7 年間働いた後で、その理由は、プライベートの時間がなかなか取れなかったからです。働き方を見直そうと考え、大学時代の友人に誘われ介護会社へ転職。最初は訪問入浴のオペレーターとして、機材の搬入や組み立てなどを担当することになり、これが、看護・介護領域に携わる最初の経験になりました。
その後は同じ会社で人事部門へ異動し、看護師の採用を担当するとともに、グループ会社で介護職の派遣・人材紹介にも携わるようになりました。この時期に、医療・介護現場における深刻な人材不足を目の当たりにしたことが、その後のキャリアで、同領域の人材紹介へ本格的に取り組むきっかけになったと思います。
介護の現場に携わった後は、介護資格スクールの運営会社へ転職。受講生や卒業生の就職支援が主な業務でしたが、より多くの方と介護事業者をつなぐため、それと並行して人材紹介事業をゼロから立ち上げました。ほかにも、スタートアップ企業でヘルスケア領域の人材紹介事業への新規参入を担当した経験もあります。
そして次の転機になったのが、現職であるスーパーナースからもらった参画の打診でした。スーパーナースはスポット派遣に強みを持ちながら、加えて紹介事業の強化を計画しており、そこで私にお声がけいただいたんです。これまで培った医療・介護分野の経験を活かせる役割に魅力を感じて、入社を決めました。
—— 現職の、スーパーナースの特徴を教えてください。
スーパーナースの事業は大きく 2 つに分かれます。ひとつは、当社が雇用する看護師によって、自費の看護サービスを提供する「プライベート看護事業」。患者様の旅行やイベントへの同行、終末期支援などを担うためのものです。もうひとつは、医療・介護施設への看護師の派遣や紹介を手がける「パブリック看護人材事業」です。
強みは、看護師特化で 35 年にわたり築いてきた実績とネットワークです。全国で約 12 万人の看護師が登録しており、東京エリアだけでも約 2,000 を超える医療施設などと取引させていただいています。この基盤があるからこそ、転職希望者へ幅広い求人を提案でき、施設からの依頼にもスピーディーに対応できるのが、当社ならではの特徴だと思います。
—— 転職支援で、禧久さんが大切にしていることを教えてください。
転職希望者の方が将来どうなりたいのか、念入りにお話を伺った上で就業先を提案しています。
給与や夜勤の有無といった希望条件はもちろん伺いますが、すべてを満たす求人があるとは限りません。そのため、家庭の事情や生活環境などもていねいにお聞きし、無理なく続けられる働き方を一緒に考えることを心がけています。
同じ環境で働くのでも、目標を持って働くか、目の前の仕事をただこなすかで、仕事への向き合い方は大きく変わると思っています。ですので、将来のビジョンが明確でない方には、面談を通じて「10 年後、20 年後に、どのように働いていたいか」を考えていただくこともあります。
看護師の中には「病院以外の働き方」を知らない方も少なくありません。ですので、まず病院に限らない働き方の選択肢を提示しています。その上で転職希望者と対話をしながら、本人の志向や将来目指す姿を具体化していきます。最終的には、私から答えを押しつけるのではなく、ご自身の意思で納得できる道を選んでいただくのが、理想とするご支援です。
仕事の「厳しい点」も情報収集し
転職希望者に伝える
—— 看護領域の転職市場は、どういった傾向があると感じていますか?
直近ですと、人材を募集する医療機関の間で、中長期的な組織づくりを見据え、次世代を担う人材を採用・育成しようとする機運が高まっていると感じています。目の前の人手不足を補うだけでなく、将来の組織体制まで意識した採用活動を行う医療機関が増えている印象です。
以前は、看護師といえば復職や転職がしやすく、「看護師資格があれば、長く働き続けられる」イメージを持たれることもありました。しかし現在は、資格だけでなく、これまでの経験や専門性、今後期待される役割まで踏まえた採用傾向が強まっています。
将来的な組織づくりを視野に入れた結果、「今後を担う若手」の採用に課題を持つ医療機関も少なくありません。看護師の転職でも、将来を見据えたキャリア形成がこれまで以上に求められています。
—— そういった求人票では分からない職場の情報を、どのように集めているのでしょうか?
基本的には、私自身が医療機関や介護施設へ足を運び、現場の方から直接話を聞いています。クライアントの看護部長はもちろん、現場で働いている看護師の方から情報をいただくこともあります。職場の状況は時間とともに変わるため、特別な用事がなくても定期的に訪問し、常に情報をアップデートするよう心がけています。
特に注力しているのが、求人票に載らない情報を得ることでしょうか。中でも私が重視しているのが、看護部長の人柄、医師と看護師の関係、職場の雰囲気や人間関係に関わる情報です。看護師の方は、離職理由として「人間関係」を挙げる方が少なくありません。現場の情報を収集して、入職後に安心して働けるかを見極めるのが特に大切だと思っています。
転職希望者にお伝えする際は、職場の良い面だけでなく、その厳しさや注意点も詳しく説明するようにしています。大変な職場であっても、その大変さを事前に知った上で現場に入るのと、何も知らずに入職後に初めて直面するのとでは、その受け止め方が大きく異なりますよね。
こういった現場の実情をできる限り率直にお伝えすることが、入職後のミスマッチ防止につながるのだと思います。
—— 企業に求められる「転職で成功しやすい人」には、どのような傾向があると感じていますか?
これまでの経験を整理した上で「将来こうなりたい」と、目標が明確な方は、転職も成功しやすいと実感しています。例えば、「訪問看護の経験を積みたい」「将来は独立して訪問看護に携わりたい」といったビジョンがあれば、そこから逆算して必要な経験を考え、私から、適した職場をご提案できます。
私自身も独立志向が強く、これまで新事業の立ち上げに携わってきました。そのため、自分なりの目標を持って挑戦する方には共感しますし、「何としても成功を後押ししたい」気持ちになってしまうんですよね。
もちろん、最初から将来像を言語化できる方ばかりではありません。その場合は、「看護師として働き続けたいのか、別の職種に進みたいのか」「臨床現場と、それ以外の仕事ではどちらに興味があるのか」など、私から 2〜3 の選択肢を示しながら、その方の希望を具体化していきます。
看護師の経験を活かせる場所は病院だけではありません。介護施設や治験関連企業、医療機器会社、メンタルヘルス相談のコールセンターなど、さまざまな選択肢があります。臨床現場以外の仕事に対して「自分にできるだろうか」と不安を感じる方には、それぞれの仕事内容や活かせる経験を説明しながら、不安をひとつずつ解消していきます。
大切なのは、私が押しつけるのではなく、最終的にご本人が、自分が歩んでいく道を納得して選ぶこと。「自分の意思で選んだ」という意識が、入職後のミスマッチを防ぎ、転職先での長期的な活躍につながると考えています。
組織課題を把握し、採用から組織変革する働きかけ
—— これまで手がけられた中で、印象に残っているご支援はありましたか?
スカウトした方を、大手介護会社における新設部門の責任者ポジションへ就くまでのご支援をしたことがあります。その方は、医療をより良くしたい思いが強く、教育分野をはじめ個人でも多方面で活躍されており、企業が求める人物像に合致すると感じて私からお声がけしました。
しかしながら、応募先の企業では、就業規則で副業が認められていませんでした。ご本人は、それまで続けられてきた個人活動の継続をご希望されており、それぞれのご希望がぶつかってしまったんです。
とはいえ企業側としても、めったに出会えない極めて優秀な人材だからこそ、どうしても採用したい。そしてご本人も、仕事内容には強く魅力を感じていらっしゃる……。そこで私が双方の間に立ち、働き方や入社条件の調整をしていきました。
「その方だけ、副業可とする」落としどころもあったのですが、最終的には例外を作るのではなく、会社として、副業を認める形に就業規則を変更していただきました。その後、半年ほどかけて役割や入社後の動き方についてもすり合わせ、ご本人の希望を最大限に実現した上で、内定に至りました。
これまでのご支援の中でも、企業の就業規則まで変えた経験はこれが初めてです。企業と転職希望者の双方が納得できる着地点を作ることができた、これまでにない達成感を得られたご支援だったと思います。
—— 転職希望者の要望をかなえる際に、企業へ働きかけるケースはよくあるのでしょうか?
決して少なくありません。
私は「転職希望者が企業に合わせる」のではなく、「企業が、転職希望者に合わせる」ことも大切だと思っています。企業が求める人物像や働き方を一方的に押しつけてしまうと、入社に至ったとしても、早期離職につながりかねません。ご本人の思いや将来の方向性に応えられるよう、企業側へ、転職希望者に合わせた柔軟な対応をお願いする場合も多いです。
もちろん、転職希望者や私からの希望を、そのまま企業へ伝えるわけではありません。企業の採用課題を意識しながら、「この方を採用すれば、この課題を解決し、組織をこう変えられますよ」と、採用を通した組織の変化を、看護部長や人事、役員にお伝えするんです。副業に関する就業規則の変更も、そうした働きかけによって実現したものです。
「この方を迎えれば、こういう組織をつくれるのではないか」とアプローチができるので、組織として発展途上にあり、変化の余地が大きい企業は特に提案のしがいがありますね。採用課題や事業課題を伺いながら、場合によっては、もともと存在しなかったポジションや部署の新設をご提案するケースもあります。
単に求人と人材を結びつけるのではなく、1 人の採用を起点に企業の課題を解決し、より良い方向へ動かしていく。そこまで関われたときに、この仕事の大きなやりがいを感じます。
「一対一を、一対一で
終わらせない支援」を実現したい
—— 転職希望者が、自分のやりたいことや希望に合致したスカウトメールを受け取るためには、どういった準備が必要だと思いますか?
ヘッドハンティングサービスのプロフィールに、職務経歴や経験を、できるだけ具体的に登録しておくのが確実です。しかしながら看護師の場合、一般的なビジネス職のように成果を数値で示すのは難しいことがあります。そんなときは、「どの診療科や領域で」「どのような経験を積んだのか」が、ヘッドハンターにとって重要な判断材料になります。
例えば「A 病院に勤務」と書くだけでなく、「内科」「産婦人科」「がん領域」など、担当した診療科や得意分野まで記載する。また訪問看護であれば、管理者経験の有無も重要な情報になります。
ヘッドハンターは、求人に合う人材をキーワードで絞り込み、登録内容を確認してスカウトを送っています。経験を詳しく書くほど、求める人物像に合うかを判断しやすくなり、ご自身に合ったスカウトを受け取れる可能性も高まると思います。
—— ヘッドハンティングサービスのおすすめの活用法を教えてください。
ヘッドハンターを選ぶ際は、その人にサポートをお願いするだけの付加価値があるか、自ら見極めようとする姿勢が大切です。求人を紹介し、条件が合致するかを見るだけであれば、必ずしもヘッドハンターが間に入る必要はありませんから。
私が考えるヘッドハンターを頼る一番のメリットは、給与や働き方、入社後の役割など、自分では直接伝えにくい希望を汲み取り、企業との間に立って諸条件の調整をサポートしてもらえることだと思います。ですので、企業と対等な目線で話し合えるだけでなく、場合によっては企業側へも、変化をするよう働きかけられる人が理想です。
まずは、現在抱いている悩みや希望を、ヘッドハンターへ率直に伝えてみてください。すべてがかなうとは限りませんが、それに対して「難しい」と答えるだけか、「難しいですが、やってみましょう」と行動してくれるのか。その反応から、信頼して任せられるヘッドハンターかどうか、判断できると思います。
—— 最後に、禧久さんの今後の目標を教えてください。
これまで築いてきたつながりを大切にしながら、より多くの医療機関と信頼関係を築いていきたいと考えています。医療機関とのつながりが増えれば、看護師の方に提案できる職場の選択肢が広がります。現場の情報を得られれば、次のご支援にも活かせますから。
これから実現させたいのは、「一対一の関係を、一対一で終わらせない」ご支援です。これまででも、ご支援した方から同じ職場で悩んでいる方をご紹介いただいたり、看護部長から別の医療機関をご紹介いただいたりすることがありました。ひとつの出会いが次の出会いを生むような、信頼の輪をさらに広げていきたいと思っています。
もちろん、理学療法士や介護職など、せっかくご紹介いただいた方がスーパーナースでは支援できない職種である場合もあります。そんなときは、私から、その領域に詳しい信頼できるエージェントへおつなぎするよう心がけています。すべてを自分で担当するのではなく、その方に必要な支援へつなぐ役割も、私の使命なのだと考えています。
これからも自分を介して、人と人、転職希望者と医療機関のより良いつながりを増やしていくことが目標です。
文=西谷 忠和/写真=遠藤 素子/編集=伊藤 駿(ノオト)
※各記事の内容や経歴は、インタビュー当時のものです。
その他の受賞者インタビューはこちら
受賞者一覧ページ