人材支援を通して、国の成長を加速させたい
フォースタートアップス株式会社・
樋口
翔大 さん
HeadHunter of the Year 2026
エグゼクティブ支援部門 3位
IT・インターネット(広告・メディア)部門 MVP
樋口 翔大
ヒューマンキャピタル本部 マネージャー
「世界で勝負できる産業、企業、サービス、人を創出し、日本の成長を支えていく」。そのために、スタートアップの成長を多面的に支援するのが、フォースタートアップス株式会社です。同社の運営する成長産業領域に特化した情報プラットフォームの圧倒的なデータと、社内に蓄積された選考を通じて得られた定性的な知見を掛け合わせ、転職希望者と企業とのマッチングを実現してきました。
転職者と企業、双方への人材支援を行うポジションである、同社「ヒューマンキャピタリスト」の樋口翔大さんは、単なる求人の紹介にとどまらず、近年は 40 代・50 代の CxO(経営幹部)クラスの支援に力を入れ、スタートアップ企業の加速度的な成長を生み出す人材支援に取り組んでいます。
樋口さんが実践する「産業の未来を見据えたキャリア提案」や、新天地で活躍できるマチュア人材の特徴を伺いました。
「人材から国の成長を促す」
視点に心動かされた
—— 樋口さんが、転職支援のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
前職では、大手の損害保険会社で法人営業をしていました。
保険という商品は、他社との差別化がどうしても難しいものです。そのため当時は、商品の
スペックで競うのではなく「樋口さんだからお願いしたい」と言っていただける関係をお客
さまと築くことに仕事の醍醐味を感じていました。
そんな中で転職を考えるようになったのは、周囲で働く先輩方の姿を通して、自分の将来の
姿があまりにも具体的に見えすぎてしまったからです。「このままでいいのだろうか」と考
えるようになり、異なる環境で、新しいことに挑戦したい気持ちが高まっていきました。
その中で人材紹介の仕事に興味を持ったのは、昔から自分が、「誰かに寄り添って、その人
の個性を引き出す」のが好きだったことを思い出したからです。 一人ひとりの個性に向き合
いながら、みんなが力を発揮できるように支えていく。そうした自分の志向を活かせる人事
や、人材紹介という領域に自然と惹かれていきました。
その軸でいくつか企業を見る中で、特に印象深かったのがフォースタートアップスの選考でした。中でも覚えているのが、選考の過程で、弊社の恒田(有希子さん、現・同社代表取締役 COO)から、日本の産業やスタートアップ市場に関するレクチャーを受けたことです。
かつては世界を牽引していた日本企業ですが、今はデジタルや AI、あるいは宇宙といった領域で、米国や中国の後塵を拝している。では、日本がもう一度成長軌道に乗るためには、どんな産業を興し、育てていくべきなのか……。面接では、そんな本質的な問いを恒田から投げかけられました。
それまでは、「人材紹介」と「産業や国の成長」を結びつけて考えたことがなかったんです。日本に必要な産業の未来を見据え、その成長を支えるために必要な人材を必要な場所に配置していく。そんなフォースタートアップスのアプローチが、とても新鮮に感じました。入社を決めたのは、そのスケールの大きさと社会的意義に心動かされたからです。
—— フォースタートアップスの特徴を教えてください。
フォースタートアップスは、最前線を走る起業家はもちろん、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)など、スタートアップを取り巻く企業や関係者との日常的なつながりがあります。スタートアップ企業の経営者などトップ層から得た「鮮度の高い一次情報」をご支援に役立てている点が、大きな強みです。
ここで得た一次情報は、企業の求人票には載らないものがほとんどです。なぜ今このポジションが必要なのか、経営者が本当に大切にしている価値観は何なのか。そうした一歩踏み込んだ情報があるからこそ、精度の高いご提案ができているのだと自負しています。
また弊社では、毎月 2,000 人以上の転職希望者と面談しており、加えてご紹介したすべての選考プロセスをチェックしています。その過程を通じて得られた定性的な知見やノウハウを社内に蓄積しているんです。
企業から得る一次情報とこの知見を掛け合わせることで、スキルや経験と人柄の両面から、企業とそれにフィットする転職希望者の傾向が明らかになります。それにより、次回以降の転職希望者の方に、より精度の高いご支援ができるようになります。
—— マッチング精度を上げるため、ほかにどのような取り組みをしているのでしょうか?
フォースタートアップスとして特徴的なのは、社内のヒューマンキャピタリストを集めた「マッチタイム」の時間を設けていることでしょうか。
これは、異なる企業や転職希望者を担当するメンバーが部門を越えて集まり、それぞれが担当している転職求職者と企業の情報を出し合うことで、担当領域を越えたマッチングを生み出すための取り組みです。
これを通して、担当者一人ではなく、フォースタートアップス全体で一人の転職希望者により良いご支援を提供できるようになります。多くのメンバーによる多様な視点を取り入れることが、より価値がある提案のきっかけになるのだと思います。
市場や現場の課題を直接聞き取り
ピンポイントの人材を
—— 樋口さんは普段、どのようなケースの転職支援を手掛けているのでしょうか?
若手からハイレイヤーまで幅広くご支援していますが、直近で特に力を入れているのが、40代から 50 代、CxO(経営幹部)に携わるようなレイヤーの方々のご支援です。
スタートアップ企業では、経営を担うキーパーソンが一人加わることで、その成長が劇的に加速することがあります。過去にも、成長企業の専門性が高いポジションに、ピンポイントで必要なスキルを持っている 50 代後半のエンジニアの方をご紹介した事例がありました。
—— 企業が求めている人材の情報は、どのように収集しているのでしょうか?
まずは、企業訪問やフォースタートアップスが主催する勉強会などを通して、現場でキャッチした生の声が貴重な情報源になります。また、起業家の方々や政府の関係者と、会食など食事をともにしながら頻繁に情報交換も行っています。幅広い立場の方と接点を持つことで、個別の企業課題だけでなく、マクロな市場全体の動きが捉えられるようになるんです。
そうした場所で交わされる「今の市場環境をどう見ているのか」「どんな課題があるのか」といった話題から、さらに一歩踏み込んで「どのような人材を、いつまでに必要としているのか」といった、人材に関わる具体的なニーズをつかんでいくんです。そして、それを個別のご支援に役立てているという形ですね。
—— スタートアップ企業への転職を考える転職希望者は、どのようなことを意識するのがよいでしょうか?
「どの会社に入るか」だけでなく、「どの産業に身を置くか」の視点を持つことが大切だと思います。現在の知名度や目先の条件だけではなく、10 年後、20 年後にその産業自体がどうなっているのか、といった考え方でしょうか。
スマートフォンが登場する前に、今のような生成 AI の時代は想像できなかったですよね。今はまだ少し遠く、現実味がないように思える技術やサービスでも、将来の当たり前になっている可能性は十分にあるんです。
例えば、新経済連盟が主催する最先端のスタートアップ経営者に贈られるアワード「JXAwards 2026」では、漫画の多言語展開を手がける企業や、宇宙事業を展開する企業の経営者が特別賞を受賞しました。こうした動きが、「どのような企業が高く評価され、どの領域に投資や支援が集まっているのか」を見極める手がかりになるんです。
ただ、転職希望者がご自身で企業や産業の将来性を見極めるのは、簡単なことではないと思います。だからこそ、私たちが起業家や投資家の方々から直接得た「生きた一次情報」をお伝えし、転職希望者の方のご経験が、次のどの成長領域で最も輝くのかを一緒に考えていく。そこに私たちが介在する本当の価値があると思っています。
ハイレイヤーの採用で企業の成長が一気に加速する
—— 過去の転職希望者をご支援した事例で、印象に残っているものはありますか?
最近ご支援した中では、宇宙関連のスタートアップ企業に CFO(最高財務責任者)をご紹介した事例が、とても印象に残っています。
その方は、これまで管理部門の責任者として、財務から人事、労務までを幅広く経験してこられた方でした。ただ、「これからはさらにファイナンスに軸足を置き、CFO として経営判断に深く関わりたい」という明確な志向をお持ちでしたので、そのご経験とキャリアへの思いを活かせる、宇宙ビジネスに関わる企業をご提案したんです。
宇宙ビジネスは、成果が出るまでに長い年月と多額の資金が必要となる、非常に息の長いビジネスモデルです。そのため、適切な資金調達や緻密な財務戦略をリードする CFO の存在が欠かせません。ご入社後、その方はさっそく社内に点在していた財務情報をきれいに整理し、経営基盤の強化に大きく貢献されました。
ご本人にとっては新たなキャリアへの挑戦となり、企業にとってもこれからの成長を支える要職の採用となった、非常に実りあるご支援ができたと感じています。
—— スタートアップ企業への転職を考える、ベテラン人材へのご支援で大切にしていることを教えてください。
過去のご経験や肩書だけでなく、スタートアップという変化の早い現場で「自ら手を動かし、実行に移せる方か」を見極めることでしょうか。
ご経験が豊富なベテラン人材は、状況を俯瞰して、大局的な戦略を描く力に長けていらっしゃいます。ただ、限られたリソースで事業を前に進めなければならないスタートアップ企業では、その戦略を自ら具体的な「実務」へと落とし込み、自ら汗をかく姿勢も同じように求められます。
例えば初回の面談で、企業やその市場に対して「自ら能動的に知ろう、学ぼうとされているか」という姿勢のある方は、スタートアップ企業へ転職しても自走できる力があるのだと思います。
—— ご支援している中で、樋口さんが喜びを感じるのはどんなときですか?
転職が決まったときはもちろんですが、それ以上にうれしいのは、ご入社いただいた後に「今、仕事が本当に楽しいです」といったご連絡をいただくときですね。
私はご入社が決まった方一人ひとりに対して、初出社の朝や入社日のタイミングで必ず転職支援を振り返ってのご連絡を入れるようにしています。新しい環境へ飛び込む決断をした方の最初の一歩を支えることで、安心感につながったらと考えています。
こういった取り組みによって、企業や働く人とのつながりがより強固になるのだと思います。そこから市場の新しい情報をご提供いただくかもしれませんし、採用ニーズを伺うきっかけになることもあります。採用でできたご縁が新しい出会いを呼んで、支援の循環をつくっていくのだと思います。
関わる企業と人の未来を
明るいものにしていきたい
—— ヘッドハンターから自分に合ったスカウトメールを受け取るため、転職希望者はどのような工夫ができると思いますか?
これまでの仕事内容や得られた成果に加え、これまでの転職理由をあらかじめ簡潔にまとめておくことをおすすめします。もちろん、公開しづらいような細かな事情まで書く必要はありません。登録情報には差し支えのない範囲で理由を記載しておき、より詳しい背景やそのときの気持ちは、初回面談の際に私たちに率直に伝えていただければ十分です。
レジュメの情報が充実していると、ヘッドハンターとの最初の面談を「これまでの経歴の確認作業」で終わらせず、具体的な求人のご提案や、これからのキャリアのご相談からスタートすることができます。お互いにとってより密度の高い時間を過ごすためにも、事前の準備はとても価値があるはずです。
—— 転職にあたり、ヘッドハンティングサービスをどのように活用するのがよいと思いますか?
ヘッドハンターやエージェントには、それぞれ得意とする企業フェーズや業界領域があることを知っておくのがよいと思います。例えばフォースタートアップスは、創業直後から成長中のスタートアップ、さらにはメガベンチャーに近い規模の企業までをカバーしています。一方で、成熟した大手企業の求人をメインで扱っているわけではありません。
ですので、もし「ゆくゆくは大手企業も選択肢に入れて検討したい」とお考えであれば、その領域に強いエージェントとも併用していただくのが、バランスよく視野を広げるためにもおすすめです。
最初から相談相手を一人に絞り込む必要はありません。まずは複数のエージェントと対話してみて、得られる情報や提案される求人の内容、そしてその背景にある「エージェントのビジョン」を比較してみてください。
その上で、「この人になら、自分の本音や本当に望む未来を率直に話せる」と思える、相性の良い担当者を早めに見つけることが大切です。ご自身の可能性を一緒に広げる並走パートナーとして、ぜひ私たちをうまく頼っていただければと思います。
—— 最後に、樋口さんの今後の目標を教えてください。
ひとつは、私自身の対人折衝力や論理的思考力をさらに磨き上げていくことです。日々、最前線で活躍する経営者やハイレイヤーの方々とより深い信頼関係を築き、彼らとの対話からしか得られない生きた一次情報を転職支援に還元していきたいと考えています。
これまで出会ってきた多くの方々とのつながりを、また次の新しいご縁へとつないでいく。人と企業、そして産業を有機的に結びつける「ヒューマンキャピタリスト」として、関わるすべての人の未来を少しでも明るいものにしていきたいと思っています。
文=西谷 忠和/写真=遠藤 素子/編集=伊藤 駿(ノオト)
※各記事の内容や経歴は、インタビュー当時のものです。
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