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これまでの選択が、振り返れば自分の価値になっていく。

これまでの選択が、振り返れば自分の価値になっていく。

その人は、技術者だった。

就活のタイミングで、最も興味があったのは、日本のものづくり。
メーカーの技術者を志望した。
職場は工場。団結力を大切にする居心地のよい環境だった。
同僚みんなが寮に入り、共同生活を送る日々。週末にはドライブやバーベキューを楽しんだ。
同期の結束力は固く、彼も会社が大好きだった。
飛行機エンジンの開発を担当し、会社の中では空を担当する立場として過ごしていた。

そんな会社生活の5年目。宇宙飛行士の採用募集が発表された。
後輩の指導を任され、対外的な仕事も始まり、充実した日々を送っている最中のこと。
今の環境を愛する気持ちと、「広い世界に打って出たい。」という気持ちの中で悩み、自問自答した末の挑戦だった。

彼は、大きな誤解をされることがある。
宇宙飛行士になるために、人生の選択を積み上げてきたのではないかと。
大学で宇宙工学を学び、エンジンの技術者から、宇宙飛行士へ。
彼のキャリアは、宇宙飛行士という夢に向かって計画性を持って進んできたように見える。
しかし、そうではない。
大学で最も学んでみたいと思ったのが、宇宙工学だったから。
就活で純粋に入りたいと思ったのが、メーカーの技術者だったから。
大好きな職場にいても、宇宙に行きたい気持ちが溢れたから。
彼の人生は、その時その時に、最も魅力的な道を選ぶことで進んできた。

未来を見据え選択肢を選ぶような冷静さよりも、その瞬間の情熱をとったからこそ、目と鼻をつまんで、新しい海に飛び込むことができたのだと彼は笑う。

だが、振り返ってみると、技術者としてのエンジニアリングセンス、ものづくりへの姿勢というセールスポイントは、宇宙飛行士になってからも生かされる、財産になっていた。
これまでの選択が、自分の価値になっていたのだ。

目の前にある最も魅力的な選択肢を選ぶこと。
そんな信念を持って、彼のキャリアは今も、大きく変わり続けている。

技術者宇宙飛行士野口聡一

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同じ苦労をするなら、情熱を注げる方へ。

同じ苦労をするなら、情熱を注げる方へ。

その人は、営業マンだった。

大好きだった指導者を諦めてはじめた仕事。
ずっと頭にあった駅伝という夢を忘れるために、スポーツとは縁を切り、必死に働いた。
その徹底ぶりは、テレビで駅伝を観ないと心に決めるほどだった。
営業時代の彼は、とにかく破天荒。よく、取引先と喧嘩した。
「俺を、その辺の営業マンと一緒にするな！」そう言って電話を切ったこともある。
なぜ、彼が取引先とぶつかるのか？
それは、長い目線で物事を判断するという、彼の根底に流れる信念からだった。
目先の利益だけを考えていては、一瞬はうまくいっても、事業も関係も長くは続かない。
最終的に、取引先の方も喜び、きちんと双方利益を上げること。
そのために逆算して行動を起こすこと。
それこそが、本当のwin-winな関係だと信じていたからこそ、ぶつかることも多かった。

そんな彼に、ある日大学から連絡があった。
ずっと夢だった、陸上部の監督のオファーだった。
遠回りしたけれど、夢が叶う。嬉しかったが、すぐに決断できない自分がいた。
オファーがきたのは35歳。すでに結婚し、ローンを組んで家も買っていた。
慣れ親しんだ会社を離れ、新たな世界に飛び込むには覚悟と勇気が必要だったのだ。
彼は、会社に出向という形で監督になれないかと直談判したが、いい返事はもらえなかった。
会社生活の後期、共にベンチャーの立ち上げを行なった上司から言われた、「二足のわらじを履くような監督を、学生が信じてくれるのか？」
その言葉で覚悟が決まった。そこで、夢に飛び込むことを選んだ。

彼は言う。「転職をしても、継続するにしても、苦労はする。
同じ苦労をするなら、自分の情熱を注げるほうで一生懸命やるべきだ。」と。
ビジネスと本気で向き合う中で身につけた逆算力は、陸上の勝利にも繋がっていた。
そして、長い目線を持って接する関係づくりは、監督と学生という立場になっても変わらない。
どんな仕事も骨子は同じ。
自分だけの軸や芯を持っていれば、どんな業界でも成功できる。
彼はそれを、これからも証明し続ける。

営業陸上競技監督原晋

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