見落としがちな転職のコツ

2019年12月03日

入社時の「肩書」にどこまでこだわるべきか?

起こりがちな「肩書」をめぐる企業と個人の見解の相違

待遇交渉のタイミングで起こりがちな問題があります。それは、入社時点につく「肩書」にまつわる問題です。具体的にどのようなケースかというと、例えば、「事業責任者」のポジション(肩書)での募集だったものが、面談でよく話を聞いていくと、入社後はいったん「社長付」などの特別につくられたポジションに収まり、一定期間を経た後に事業責任者にすると言われた、そんなケースです。

どうして企業は、そのような面倒なことをするのでしょうか。これは特に異業種転職の場合によくあるケースですが、現職と転職先の業界で会社規模や職位の捉え方が違う中、新たに採用した人を入社と同時に「事業責任者」に就けると、既存社員の間にハレーションが起きる可能性があるためです。ハレーションが起きると、その人を採用した本来の目的、つまり事業の推進が難しくなってしまいかねません。

外資系企業と違って役割と責任が限定されないポジションでの採用が多い日本企業では、現実に組織に起こりうるリスクを考えた時、新しい人を活躍させるための環境整備に一定の時間が必要と判断するケースが多いのです。

肩書を重視するか、それとも実質的な入社後の活躍を重視するか

このような企業側の考えが、少なくとも面接の際に転職希望者に語られていればよいのですが、オファー時に明らかになるケースもあります。そうすると、転職希望者の方からは「聞いていた話と違う」という反応が起こりがちです。それはもっともな反応でしょう。

ただ、採用される側としては、「聞いていた肩書と違うなら、辞退します」と即答する以外にも、一呼吸置いて考えてみる選択肢があるのではないでしょうか。特に、これまで大なり小なりの組織を率いて責任ある立場で仕事をされてきた方には、新しい人を迎え入れると組織に少なからず影響が起こる現実も理解できるでしょう。

ご自身がこうした事態に直面した場合、「辞退」も選択肢の一つです。ただ、企業側の背景・事情を理解できるなら、交渉の中で本来のポジションに就くまでのプロセスや想定期間を企業から聞き出し、それが明確で腑に落ちるものであれば、オファーを承諾するのもまた、選択肢の一つでしょう。あくまで入社時の肩書にこだわるのか、それとも入社後を見据えて「自分がやりたいことができるならよし」とするかは、転職する方の判断に委ねられています。

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