HEADHUNTER INTERVIEW
転職希望者の方々が「覚悟」を持って
挑むにふさわしいポジションなのか。
見極めているのは、まさにその一点。
パーソルキャリア
エグゼクティブエージェント
エグゼクティブコンサルタント
澤本 静
- 得意分野:人材・教育・サービス業界
- 大手人材総合サービス会社にて、法人営業、カウンセラー、新規事業立上げ、マネジメント業務に携わった後、最大手医療ポータル運営会社にて新規事業開発に従事。その後、当社参画。経営企画・新規事業企画職全般の転職支援に強みを持つ。
経営人材への転身は容易ではない。
成功している方には、共通点がある。
私はこれまで数多くの経営人材を企業にご紹介してきましたが、活躍されている方にはある共通項があります。それは「覚悟」の有無。企業が外部から人材を求めるのは、たとえば新規事業創出や海外事業展開など、さらなる成長への課題解決を図るため。そうしたテーマを担いたいと志向する転職希望者の方々はたくさんいらっしゃるものの、自分の経験から言えば、どんなに優秀な人材でも半年間はなかなかパフォーマンスを出せません。特に私はサービス業を中心に、経営者の右腕となるポジションをご紹介するケースが多いため、入社後のプレッシャーも尋常ではありません。
先日携わった老舗不動産企業の案件も、まさにそうした状況でした。強力なリーダーシップを持つ経営者が、新規事業を続々と立ち上げていく戦略を掲げ、それをリードする人材が欲しいと。財務体質はきわめて優良で投資余力は十分にあり、事業開発を担うには魅力的なポジションでした。しかし、その経営者の方はある種天才肌で、朝令暮改は当たり前で要求レベルも非常に高い。厳しい環境なのは目に見えていました。そこで私が転職希望者の方々に聞くのは、それでもチャレンジする意志があるかどうか。事実、いまそちらで成果を上げているのは、困難をすべて承知した上で、ここで得られるキャリアに強く惹かれて入社を決意された、大手企業出身の40代の方。いまは経営陣の一角として活躍され、たいへん充実しているとの声をいただいています。私はヘッドハンターとして、こうしてご提案するポジションが本当に覚悟をもって挑むにふさわしいものなのか、転職希望者の方ご自身で判断していただくことを何よりも重視しています。
転職希望者の方の夢と、
経営者のビジョン。
それがリンクしなければ紹介しない。
転職希望者の方々とお会いする際、必ず『夢は何ですか?』という質問を差し上げています。ほとんどの方が戸惑われるものの、この社会の中で成し遂げてみたいことは、きっと誰の中にでもあると思うのです。普段意識していなくても、過去のキャリアの中で本気になれた瞬間、夢中になれた瞬間を回想していくうちに、それが明確になってくる。そして、転職希望者の方が本当に成し遂げたいことと、クライアント企業の経営者が描くビジョンがリンクしていれば、そこで初めて具体的なお話をさせていただく。逆にそれが外れているようであれば、どんなに待遇の良い条件でもご提案しません。私の意図をしっかりとお伝えし、ご自身の夢に近づけるポジションがあれば またお声掛けするというスタンスで臨んでいます。経営者の中には強烈な個性をお持ちの方もいらっしゃる。そうしたトップと相性が合わないと逃げ場がありません。すぐに退職されるような事態になってしまうと、その方の経歴にも傷がついてしまう。私とお会いする転職希望者の方々の将来の市場価値を下げるような提案は、絶対にしたくないですから。
ヘッドハンターの仕事に長く携わっていると、かつて私が転職のお手伝いをさせていただいた方々から、昇進などのご連絡などをいただくことがよくあります。また、人材をご紹介した企業の新規事業などが新聞等のニュースで報じられると、名前は出ないものの、その方の活躍がうかがい知れて大きな感慨がある。それはまさにヘッドハンター冥利に尽きる瞬間です。
苦戦する優良企業と、
志ある優秀な人材をマッチングして日本を再び盛り上げたい。
私のヘッドハンターとしての原動力は、過去に味わった苦い経験にあります。かつて私は、大手情報サービス企業に在籍し、企業のマネジメント層に向けての経営課題解決のためのソリューション提案で実績を重ねました。そこで自分のアクションが顧客の経営に影響を与え、また誤った方向に導くと企業を揺るがしかねないことを痛感。私の力が及ばず、残念ながらお客様の経営が行き詰まって倒産に至った事態も目の当たりにしました。その時「私にもっとできることはなかったか」という自責の念もあり、以降、本当に経営者の力となりたい、さらには日本全体のGDP向上に繋がっていくような、大義のある仕事がしたいと思うようになりました。ヘッドハンターを務める現在も、その想いは変わりません。
私が関わっているサービス業は、日本の法人の7割を占めると言われています。我が国の経済を支える重要な産業ですが、その一方で収益性が低くて経営に苦戦している企業も多い。この業界に深く関わるにつれて、社会的に意義のあるサービスを有する企業はまだまだたくさんあると実感しています。ただ、それを利益に繋げていくことに苦労されている。そのことに、もどかしさを感じています。そこにぜひ志のある優秀な人材をマッチングさせて、世界でも通用する日本のサービス業を再び盛り上げていきたい。そして、安心してこの社会を子どもの世代に託していきたい。私自身、そんな「覚悟」をもって、これからもこの仕事に臨んでいきたいと考えています。
※各記事の内容や経歴は、インタビュー当時のものです。